いであがAIを使ってダム管理者の経験値を反映させる流水管理支援システムを開発した。災害時などの流入量把握だけでなく、放流操作によるダム湖や下流河川の水位変化、流量増加に伴う発電量の変動などを数値化。洪水被害を最小限に抑え込んだり水力発電量を最大化したりするなど、最適な流水管理ができるようにする。ダム管理事務所1カ所でシステムを試行中。内容を精査して本格運用につなげる。
「ダム流水管理支援システム」は、管理者の経験値に基づく放流操作による効果を数値化した「価値関数」を取り入れた。価値関数には放流に伴うダム湖の貯水位変化のほか、下流地点の洪水や渇水の発生可能性、流量の変動による発電量増加などの要素を加減点する。
ダムごとに異なる制約条件が設定可能。各ダムで最大の効果を発揮するような放流操作を提案できる。アンサンブル予測(不確実な現象の予測)と組み合わせ、降雨見通しを考慮した事前放流計画も立てられる。洪水や渇水など、注意が必要なタイミングを知らせるアラート機能も設けた。
従来は流域の平均雨量と過去のダム流入量の実績データから、流入量を予測する貯留関数などの物理モデルを使うものが主流だった。近年は未経験規模の災害が増え、過去データだけでは予測精度が下がる可能性が出てきた。精度を高めるため、同社は物理モデルにAIモデルを組み合わせたシステムを構築した。
システムを活用することで洪水被害の抑制や水力発電量の増加につなげる。国土交通省が推進し流域全体で水利用や環境対策に取り組む「流域総合水管理」と連携し、システムの導入範囲を広げていく。