最近目につくのが「〇〇化」「△△性」という言葉だ。効率化、合理化、安全性、信頼性--。一見立派そうだが、中身はスカスカなことが多い。役所の文書にあふれ、気付けば記者の原稿にまで侵食している▼言葉の多様な表現は絶滅危惧種。確かに便利ではある。定義を詰めずとも知的に見える。だが便利さの裏に、表現力の死臭が漂う▼「性」と「化」で書けば頭を使わなくて済む。それは病院食にパセリを乗せ「彩りを添えました」と言い張るようなもの。栄養は取れるが、生気はゼロ▼記者の仕事は言葉を研ぎ、これでどうだと示すことだ。「化」や「性」で薄めた原稿は商店街で流れる無難なBGMのよう。耳には入るが、心には残らない。現場の熱気や人の声を切り取る代わりに語尾でごまかすのは、言葉への裏切りに近い▼世の中が便利な語尾に酔いしれる風潮が気に入らない。せめて記者だけは「表現力の合理化」などと開き直らず、血の通った言葉を選ぶべきだ。言葉は保存食ではない。放置すれば腐り、怠れば朽ち果てる。「性」と「化」に頼り続ける社会は、思考を枯死させ、ゆっくりと奈落への歩みを進める。