東洋建設と関海事工業所(兵庫県淡路市、関勝社長)が洋上風力発電の建設コストを抑える方策として、今夏に「ウオータージェット式海底ケーブル埋設技術」を実海域で実証した。高圧の水を噴射して海底に溝を掘り、ケーブルを埋設する。東洋建設が2026年の完成に向け建造中の自航式ケーブル敷設船と新型埋設機でウオータージェット式の導入を見据え、施工技術の検証を重ねる。
9日に実証実験で使ったケーブル敷設台船と海中埋設機を報道機関に公開した。実証事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の23~25年度採択案件。海底の基礎技術開発で実績を持つ東洋建設と、海底ケーブル工事を得意とする関海事工業所の知見や技術を持ち寄り、ウオータージェット式の海底ケーブル埋設技術を開発する。
洋上風力発電の実績が多い欧州海域と異なり、日本近海は締まった砂地盤が多い。従来のケーブル埋設は海底環境の事前調査に基づく施工計画が未確立で、工事遅延やコスト増が課題だった。
両社は砂や泥など比較的軟らかい海底質に適しているウオータージェット式の施工技術を確立するため実証事業を推進。25年度は、24年度までに行った机上検討や屋内実験で得られた定量的評価を実海域で検証し、地盤条件ごとの課題を抽出する。
関海事工業所が保有する敷設台船(全長80メートル×幅24メートル、深さ4・5メートル)と埋設機(6・3メートル×3・7メートル×高さ3・4メートル)を使用した。無人潜水機(ROV)で事前調査し、台船から門型クレーンで埋設機を海中に投入した。
水深1・5メートルの海底に敷設済みのケーブルを底面でつかみ、海水の高圧噴射で海底面の土を緩め、隙間にケーブルを埋設。1時間当たり300~400メートルのスピードで敷設を繰り返し、ROVで稼働状況を監視した。
26年度以降は新型埋設機を用いて検証を重ね、実用化につなげていく。
東洋建設の村上浩三GX事業本部副本部長は「日本のエネルギー政策で洋上風力発電は不可欠になる。プレーヤーの一員として基幹産業の確立に貢献していく」と話した。