外壁タイルの浮きをAIで簡易に調査・判定できる竹中工務店の技術が、日本自動認識システム協会主催の「自動認識システム大賞」で最優秀の大賞に選ばれた。ドローンで撮影した外壁の赤外線画像を高精度に自動処理でき、誰が判定しても同じ結果が出る。
◇業界初の自動認識システム大賞受賞
開発を先導したのは東京本店の深沢茂臣作業所長。作業の省人化や低コストなど技術の優位性を改めて強調する。実績を重ねてきた民間建築物に加え、公共建築物への適用拡大にも意欲を見せる。
10日に自動認識システム大賞の表彰式が東京都内で開かれた。表彰は27回目だが、建設会社が大賞に選ばれたのは初めてになる。
外壁調査技術は「スマートタイルセイバー」として開発した。2021年に福岡市の高層マンションで初適用し、各地にある自社施工のマンションや商業施設などを中心に、40棟を超える建築物で点検に活用した。ただコロナ禍などの影響が長びき、この1~2年は思うように採用が伸びていない。深沢氏は「大賞を契機に改めてスマートタイルセイバーの展開に弾みを付けたい」と前を向く。
スマートタイルセイバーの開発は、竣工10年後の全面打診調査を義務付ける建築基準法令の外壁調査規定に対応。08年には調査方法に赤外線調査が併記された。ドローンで撮影した外壁の赤外線画像を解析し、タイル目地とタイル面の温度差でタイル割を検出。従来は手作業だった建物全体のタイル割図面の作成も、写真をつなぎ合わせることで可能になり、1枚ごとにタイルの浮き状態が把握できるようになった。
従来の全面打音調査では、全面足場を組んで技能者らがタイルを1枚ずつ確認する。赤外線調査でも判定者の経験や技能によって判定結果の精度に差が見られるケースもあった。スマートタイルセイバーではコストを大幅に縮減し、判定結果にばらつきが出ないようにした。危険な高所作業も回避する。
深沢氏は、スマートタイルセイバーの普及拡大による意義や効果を「AIを使った建築の社会貢献」と表現し、「外壁調査で当たり前のように使われるようにしていきたい」と訴える。特に自社施工以外の物件や実績のない公共建築への普及拡大に意欲を示す。公共建築では公営住宅や学校施設などへの展開を視野に入れる。開発に携わった東京本店技術部機械・電気グループシニアチーフエンジニアの菊池亮人氏も「建設DXを象徴する技術の一つ」と胸を張る。
スマートタイルセイバーは、サステナブル経営推進機構が主催する第8回「エコプロアワード」の奨励賞にも選ばれた。