大成建設はダム建設現場で、建設機械3機種の協調運転による完全無人化施工を実現した。自動運転と遠隔操作による複数の自動運転建機を組み合わせる協調運転制御システム「T-iCraft」を導入し、狭隘(きょうあい)で複雑な経路での土砂運搬や非常に狭いエリアでの盛り土作業などを迅速、正確に実施した。今後はダムや造成などの現場に積極導入し、人手不足を補完しながら作業のさらなる生産性向上を目指す。
同システムは建機メーカーに関係なく、自動運転または有人運転いずれも対応可能。最大32台まで複数機種の建機を協調制御できる。パナソニックアドバンストテクノロジー(大阪府門真市、前田崇雅社長)が保有するロボット自律制御・協調タスクプランニング技術を活用している。
2020年12月~25年3月に栃木県鹿沼市で施工した「南摩ダム本体建設工事」(発注者・水資源開発機構思川開発建設所)に導入した。有人操作機とも連携しつつ、遠隔操作によるバックホウと自動運転のクローラーダンプ、ブルドーザーの3機種を用いて、作業エリア内の完全無人化施工を実現した。
クローラーダンプの走行ルートは最少幅5メートル、高低差が20メートルあり、折り返し走行が必要な複雑な経路だったものの、周囲の障害物を検知して自動走行する機能で安全に運搬した。ブルドーザーによる土砂の敷き均(なら)しエリアは幅10メートルの狭い場所にありながら、クローラーダンプで運搬された土砂を計測し、最適な経路生成の機能を持つ自動運転ブルドーザーで敷き均しした。
計画や施工、出来形管理、評価、フィードバックといった一連の施工サイクルも自動化した。複数の建機を用いた土砂の積み込みや運搬、敷き均しといった一連作業について、計画を入力するとシミュレーションによる評価も実施。施工がシミュレーション通りに完了しているかデジタルツインで確認し、出来形管理・評価した結果をフィードバックして次の作業に反映できるようにした。