大成建設は、シールドトンネル工事に使用する脱炭素型の裏込め注入材を開発した。独自技術の環境配慮コンクリートを応用。多様なニーズに合わせて4タイプをラインアップした。材料製造時の二酸化炭素(CO2)排出量が従来と比べ60~110%削減できる。既存の設備や施工プロセスのまま現場に導入可能。10月に名古屋市内で初適用する。別工事への導入も検討していく。
環境配慮コンクリート「T-eConcrete」のうち、高炉スラグでセメントを代替する「セメント・ゼロ型」と、CO2を固定した炭酸カルシウムをセメント・ゼロ型に添加する「Carbon-Recycle」の二つの技術を応用した。
「T-eCon/裏込め注入材」はゲル化の時間や強度発現が調整できる2液型(A液とB液)で、A液に用いるセメントを脱炭素型粉体に置き換える。粉体の配合を調整し▽セメント・ゼロ型:通常強度▽同:早期強度▽Carbon-Recycle:通常強度▽同:早期強度-の4タイプを用意。適用条件に応じて選択できる。
セメント由来のCO2排出量をなくした。材料製造時のCO2排出量は従来の裏込め注入材と比較し、セメント・ゼロ型で通常強度=70%減、早期強度=60%減、Carbon-Recycleで通常強度=110%減、早期強度=105%減-と試算。Carbon-RecycleはCO2排出量の収支がマイナス(100%以上削減)になるカーボンネガティブを実現する。
A液に用いていたセメントを高炉スラグが主成分の硬化材に置き換えるだけなので、既存の設備で製造可能。A液の圧送性能、A液とB液の混合材(裏込め注入材)のゲル化や強度発現が従来品と同等のため、既存のプロセスで施工・品質管理ができる。
実機プラントでの製造試験や延長約1キロの圧送実験、注入1時間後の圧縮強度試験などを実施。製造効率やポンプ圧送性、A液とB液混合後の性能(強度など)が従来材と同等であると確認した。
初適用するのは名古屋市上下水道局が発注した「名駅南雨水幹線下水道築造工事(その2)」。セメント・ゼロ型:早期強度タイプを全線(174メートル区間)に適用予定。充填量は約150立方メートルを予定している。
同社は環境配慮コンクリートを用いたセグメントやインバートで施工実績がある。T-eCon/裏込め注入材の開発により、シールド工事で使う環境配慮コンクリートのラインアップが出そろった。シールド工事での適用を積極的に進めるとともに、別分野でも環境配慮コンクリートの導入を検討。現場適用できるコンクリート製品を開発し、脱炭素社会の実現に貢献する。