鉄建建設ら/鉄塔基礎向け機械式深礎工法を試験施工/双腕機械で破砕と積み込みなど

2025年10月1日 技術・商品 [3面]

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 鉄建建設と東北電力ネットワークは9月30日、送電鉄塔の基礎工事向け機械式深礎工法の試験施工を宮城県大郷町内で行った。送配電会社や送電工事の施工会社などを招き実施。バケットとブレーカーを備えた双腕型掘削装置などによる掘削や排土、裏込め注入の作業状況を確認した。施工は同工法の機械管理などを行うジェイテック(東京都千代田区、三宅信次社長)が担当した。2026年春にも採用を予定している。
 硬質地盤・山岳向け機械式深礎工法「Shinso-MaN W(シンソマンダブル)」は鉄建建設ら3社と日立建機日本、日鉄建材、忠武建基の計6社で開発した。掘削、排土、土留め、裏込めの各作業に対応し、作業性と安全性を兼ね備えた総合的な機械式工法。特許取得済み。
 1日当たりの施工速度は1~1・5メートル(人力掘削0・5メートル)で、作業人員が職長1人と作業員2人(職長1人と作業員5人)。コストは人力掘削と比べ20%削減するという。杭径は2・5~3メートル、杭長が30メートル程度まで対応可能。対応土質の限界を確認中だが、最大でレキ混じり砂岩(N値250程度〈軟岩II〉)の掘削を予定している。
 機械掘削を行う「掘削室」と、人力でライナーの組み立てや裏込め注入を行う「作業室」に分かれているのが特徴。掘削室の上に作業床を設け、その上に作業室を置く2段構成となる。掘削機は地盤を粉砕するブレーカーと、掘削土を積み込むバケットの二つのアームを備え、いずれも地上のオペレーターがモニターで映像を確認しながら遠隔で操作する。
 掘削土の搬出は排土バケットを使用し、ライナーに設置したレールと高速ウインチによって、地上からボタン操作で排土する機構を採用した。これらによって掘削室に作業員が立ち入る必要がなくなった。作業室上空にヘッドガードを設け、荷揚げ・荷下ろし時の土砂の落下を防止するなど安全性を高めた。
 同日の試験施工は深さ約9メートルに掘削面があり、ブレーカーで地盤を粉砕し、バケットで掘削土を搬出。降下用ジャッキで作業床を下げたことで作業室を確保し、作業員がライナーを組み立てて裏込め注入を行った。
 鉄建建設の長尾達児常務執行役員技術全般兼建設技術総合センター所長は、同工法について「サイクルタイムの確認や山岳の狭いヤードでの配置など検証事項はあるが、実用化にほぼめどが付いた」と手応えを示した。試験施工の見学者の意見を反映し、「今後の開発の糧にしていきたい」と話した。