◇3者技術協定で課題解決、再供用
インフラメンテナンス国民会議近畿本部フォーラムと奈良県十津川村、本州四国連絡高速道路会社は1日、「人道吊橋のメンテナンス技術相互協力協定」に基づく補修・補強を経て、3月に供用を再開した猿飼橋(十津川村猿飼)の視察会を開いた。同村が財源や技術課題から廃橋か再利用かを模索する中、近畿本部フォーラムが3者連携の枠組みを通じて技術指導を行い、本四高速会社が保有するつり橋の専門的な知見を生かして、地域課題を解決に導いた。
1960年ごろに完成した猿飼橋は橋長143メートル。2015年12月に行った点検で健全度IVと判定された。支承に変形や亀裂、主塔にも一部変形などが見られ、村は廃橋を検討していたが「撤去するにもその方法が分からず、補修する場合も制約や技術的な課題があった。でも何とか地元住民のために残したい」(大前貴広建設課長)との思いから、近畿本部フォーラムに相談したことが猿飼橋再生へのきっかけとなった。
現地調査や実証実験などを経て、20年11月に3者協定の締結に至った。本四高速会社の助言の下、ケーブル定着部を開放して行う健全度調査を実施。その結果を踏まえ、ケーブル定着部の補強やバイパス材の施工など適切な対策方針を策定、施工段階でも技術的な指導が行われた。施工は地元企業で構成する長谷川建設・西建設JVが手掛けた。
現地視察会には玉置広之村長、近畿本部フォーラムの霜上民生事務局代表と片岡信之フォーラムリーダー、情報ワーキンググループ長の坂野昌弘氏、本四高速道路ブリッジエンジの山口和範技術事業本部長、協定の橋渡し役を担った近畿地方整備局から川島隆宏企画部事業調整官らが参加。補修・補強工事を終えた猿飼橋のケーブル定着部の補強状況などを確認した。
意見交換会で霜上事務局代表は「人道つり橋は全国にもたくさんあり、同様の課題を抱えている。十津川村での成果を全国にも発信していく」とし、片岡フォーラムリーダーも「自治体支援の在り方を一定程度示すことができた。今後もこの枠組みを生かし技術面の支援などを続けていく」と決意を表明。坂野氏は「人や財源がなければ知恵しかない。この良い事例が全国の自治体が抱えるメンテナンスの課題解決につながれば」と期待を寄せた。
工事が円滑に進んだのも本四高速グループが持つ専門的な知見、ノウハウが発揮されたことが大きい。山口本部長は「地元に喜んでもらえる仕事を常に意識してきた。今後も技術による社会貢献を続けていく」と強調。玉置村長は感謝の言葉を述べるとともに、「今後も協定に基づく技術提案や助言をいただきながら、残るつり橋の活用などを検討してきたい」と語った。