大林組は、トンネル覆工コンクリート補強工事の工程が削減できる炭素繊維シート接着工法を実用化した。縦・横2方向に補強効果がある特殊製法シートを覆工表面に貼り付ける。1方向のみ織り込まれたシートを使う従来の2層貼り付けから1層に半減。幅も500ミリから1000ミリの大判にし、工程の約20%を削減する。岩手県八幡平市で施工する「東北自動車道竜ケ森トンネル補強工事」(発注者・東日本高速道路東北支社)の現場に導入し、施工効率を大幅に高めた。
8日に発表した。トンネル覆工コンクリート用の炭素繊維シート接着工法「ワンバインドクロス」として、東レやコニシ、ケミカル工事(神戸市東灘区、國川正勝社長)と開発した。特殊製法で縦・横2方向に織り込まれた炭素繊維シートを使用する。素材重量は各方向1平方メートル当たり200グラム。1層で従来の2層貼り付けと同程度の補強効果を確保する。繊維交点には含浸孔を設け、覆工コンクリート表面に接着させるエポキシ樹脂を含浸しやすくする。
1982年に供用開始された竜ケ森トンネルの現場ではワンバインドクロスを適用し、覆工コンクリート前面に炭素繊維シートを貼り付けて補強。工程数を従来の11工程から8工程に削減し、ひび割れ補修や劣化・損傷分の断面修復、背面空洞への注入に対応している。2021年に開発したトラック積載型システム足場「フラップリフト」も併用し、施工効率を約2倍に高めた。
大林組は、ワンバインドクロスの強度をさらに高め、適用範囲をトンネルに加え橋梁の下部工や桁、建築物の補強などにも拡大していく方針。老朽ストックが増加しているインフラ構造物の長寿命化に貢献する。