地域建設業の災害対応、地域を越えて経験共有/石川と徳島、若手経営者らが対話

2025年10月28日 行政・団体 [1面]

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 地域建設業に期待される「地域の守り手」としての役割を果たそうと、地域を越えて災害対応の経験や教訓を共有する動きがある。主体となっているのは各地の建設業界を支える若手の経営者らだ。自らが被災した場合や、近隣の被災地を支援する場合に備え、事前に何を準備すればいいか、どう初動対応するのが適切か。具体的な実体験を伝え、直接対話することが、それぞれの地元を守ることにつながる。
 徳島県建設業協会青年部(岩朝祐二会長)のメンバー約30人が金沢市を24日に訪れ、石川県建設業協会建設青年委員会(明翫圭祐委員長)のメンバー約20人と意見交換した。2024年1月と同9月に能登半島を相次ぎ襲った地震、豪雨災害への対応を聞くことが目的だ。南海トラフ地震の被害が懸念される徳島県だが、大規模な災害は近年発生していない。岩朝会長は「初動対応にしても経験がなく、分からないことが多い」と現状を明かす。
 石川側が初動対応での教訓に挙げたのは、確実な連絡手段の必要性だ。宮地組(石川県輪島市)の宮地雄大代表取締役は、携帯電話が役に立たず社員全員の安否確認に1週間以上かかったと発災時を振り返る。道路が寸断されて物資は途絶え、近隣からの応援も難しかった。想定外の事態に直面したからこそ、他県でも「日頃から災害への準備、備蓄をしてほしい」と訴えた。
 当時は震源地から離れた金沢市以南の建設会社らが復旧活動を後方支援する役割を担った。石川建設工業(金沢市)の寺田道生専務は、市内業者でローテーションを組んで応援に向かった際に有効だった事例を紹介。1社が代表して重機を持ち込み、次に回ってくる会社にも引き継いで活用したことがスムーズな対応につながった。必要以上の備品の持ち込みも勧める。車中泊でも温かい食事が取れるよう、電子レンジとポータブル発電機を用意したことが好評だったという。
 被災地に入ってからも迅速な復旧に向けたアイデアを形にした。行政との連絡手段の弱さを補うため、県職員も交えたLINEグループを作成。写真や位置情報も共有し、作業の状況報告や、業者間の円滑な引き継ぎに役立てた。
 意見交換を終え、岩朝会長は「協会や各社のBCP(事業継続計画)に生かし、災害はいつ来るか分からないという気持ちで一日一日を生活していきたい」と気を引き締める。明翫委員長によると、他県の建設業協会の青年部とも近く意見交換を予定する。「各県の取り組みに、まねできる部分、勉強になる部分がある。10年、20年後を見据え、どうすれば業界が良くなるか、みんなで考え、手を打っていくのが青年部の役割だ」と意義を強調する。