中建審WG/標準労務費最終案固まる/個別現場への浸透が鍵に

2025年10月29日 行政・団体 [1面]

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 改正建設業法に基づき中央建設業審議会(中建審)が勧告する「労務費に関する基準(標準労務費)」の最終案が、27日に開かれた中建審のワーキンググループ(WG)で固まった。標準労務費の設定水準や作成方法に加え、見積もり慣行の定着や労務費・賃金支払いの確認といった実効性確保策も明記。12月初旬の中建審総会を経て勧告され、実際の運用が始まる。発注者を含めた建設工事のサプライチェーン(供給網)全体に新たなルールを周知し、現場の個々の取引まで浸透させる段階に今後入る。
 同日のWGで標準労務費の最終案の取りまとめを座長の小澤一雅政策研究大学院大学教授に一任した。メンバーの有識者からは、技能者の処遇改善の必要性などに供給網全体の関係者が当事者意識を持ち、これまでの商習慣を変えていくというメッセージを盛り込むことを求める声などがあった。最終的に勧告する文書には、標準労務費の考え方などが現場の隅々まで確実に伝わり「絵に描いたもちではなく、実行されるため」(小澤座長)の工夫を施す考えだ。
 国土交通省の楠田幹人不動産・建設経済局長は、勧告後の対応について「公共工事、民間工事を問わず、あらゆる関係者に丁寧に周知する」と話し=写真、12月12日に予定する改正業法の全面施行への準備に加え、実効性確保策の詰めの作業も進める意向を示した。その上で「技能者の処遇改善に向けた大きな一歩だが、つくったから終わりではなく、むしろスタートだ」と確実な運用の重要性を訴えた。
 建設業団体の代表者らも深刻化する担い手不足への打開策として新たなルールの早期の浸透を求める声を上げた。岩田正吾建設産業専門団体連合会(建専連)会長は、処遇改善に率先して取り組むのは不利との認識が広がらないよう「業界として(全体を)グリップして取り組んでほしい」と各方面に呼びかけた。全国建設業協会(全建)を代表して荒木雷太岡山県建設業協会会長は、労務費の切り下げを入札段階で防止する対策の導入など、入札制度の見直しを合わせて求めた。