回転窓/“我田引鉄”でない鉄道整備を

2025年10月29日 論説・コラム [1面]

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 他人のことを考えずに自分だけが利益を得ようとする行動を我田引水という。この言葉をもじり、かつてのマスコミは選挙区に鉄道を誘致しようとする政治家を“我田引鉄”と批判した▼その人物として有名なのが田中角栄元首相だろう。彼は故郷の新潟から東京に人や物が行き来しやすいよう上越新幹線や関越自動車道などのインフラ建設を進めた▼明晰(めいせき)な頭脳と行動力から〈コンピューター付きブルドーザー〉と呼ばれた角栄氏。だが大都市と地方にある隔たりをなくすため、インフラ整備に全身全霊をささげた姿と行動は賛否両論あるだろうが、日本の将来を本気で考えた政治家の一人だったのではないか▼東京都は都営大江戸線の終着駅から、さらに北西へ4キロ延ばし、練馬区の土支田、大泉町、大泉学園町の3駅を新設する延伸案を公表した。長年〈陸の孤島〉と呼ばれた地域。住民にとって、このニュースは吉報だったはずだ▼鉄道の開通は街に新たな価値をもたらす。国内には鉄道空白地域がたくさんある。我田引鉄ではなく、地域の声に耳を傾け、真に必要な鉄道整備が進められる政治家を待ちたい。