山形新幹線の庭坂駅(福島市)~米沢駅(山形県米沢市)区間をバイパスする「米沢トンネル(仮称)」の実現に向け、山形県は29日に都内で事業スキーム検討会議の初会合を開いた=写真。市町村やJR東日本、国土交通省などを交え整備方式や費用負担を議論。今後、2回程度の会合を経て、年度内にもプロジェクトの方向を取りまとめる。2026年度「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に反映し、国の27年度予算編成や税制改正に盛り込むことを目指す。
「山形新幹線米沢トンネル(仮称)整備スキーム検討会議」は、森地茂東京大学・政策研究大学院大学名誉教授が座長を務める。米沢トンネル構想は、豪雪地帯で屈曲が多い県境の山岳地帯を延長約23キロのトンネルで貫く。山形新幹線の遅延・運休は、約4割が同区間でのトラブルに起因している。
JR東日本が3月に公表した試算によると、プロジェクトの総事業費は約2300億円で、約19年の工期を見込む。県は将来の奥羽新幹線構想の実現にもつながるとして、22年10月にJR東日本と覚書を交換。地形・地質調査などを共同で実施してきた。
初会合では、県が既存の幹線鉄道を巡るスキーム、税制、運賃制度などを説明。JR東日本は「受益の範囲内での費用負担」の考えを示した。着工前に環境影響評価(環境アセス)や設計に6年程度が必要と明らかにした。
現時点で利用可能な国の「幹線鉄道等活性化事業費補助」制度は、国と地元の負担が各2割。残る6割を別途調達する必要がある。県はJR東日本の負担分に加え、補助金や運賃加算、財政投融資を含めた複数の手段を組み合わせる必要がある指摘。地元負担を整備新幹線並の実質1割程度に抑える仕組みを検討するべきだと提案した。
会合後、折原英人山形県副知事は「トンネルが実現すれば安定的な運行が可能になり時短効果も見込める」との見解を示した。会議の成果を「整備スキームの合意に向け大きな一歩になる」と位置付け、「検討をより深め関係者間での合意を経て、事業を次のフェーズに進めたい」と語った。









