伊藤工業とカナモト/建機の遠隔操縦技術を実証/電波不感地帯での施工性確認

2025年11月10日 技術・商品 [6面]

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 伊藤工業(北海道室蘭市、伊藤豊社長)とカナモトは、建設機械遠隔操縦の実証実験を行っている。バックホウにカナモトの遠隔操縦システム「KanaTouch」(カナタッチ)を組み込み、衛星通信サービス「スターリンク」を使用して電波不感地帯での施工性を検証している。伊藤工業の荒雅秀工事課長は「遠隔地からもタイムラグがなく臨場感のある操作ができると確認できた」と今後の本格導入への手応えを話した。
 北海道内では砂防やダム、トンネルなど土木工事の現場となる山間部を中心に電波不感地帯が多く、伊藤工業では2023年から不感地帯の通信環境改善に取り組んでいる。今回は同社が北海道苫小牧市で施工している「樽前山火山砂防工事の内熊の沢川3号砂防堰堤左岸外工事」(北海道開発局室蘭開発建設部発注)現場で、カナモトの協力を得て10月28日から11月中旬まで実証実験を行っている。
 オペレーターが建機の傾きや振動などの臨場感のある操作を希望したことから、汎用(はんよう)の建設機械に後付けで設置することで遠隔操縦を可能とするカナタッチを使用。0・8立方メートル級バックホウに搭載した。建機側はスターリンクと複数ルーターをつなぎ広範囲のWi-Fi(ワイファイ)エリアを構築。操縦席側は光回線を使用し、現場から約4キロ離れた事務所で遠隔操縦を行った。
 現場代理人を務める荒課長は今回の実証で「重機の傾きなど臨場感を感じて操作でき、安全に作業できることが分かった。災害復旧など危険な箇所での施工や働き方改革に生かせるのではないか」と有効性を強調。「通信不感地帯でも広範囲の通信環境を構築でき、タイムラグなく操作できる。今後の導入に向けた足掛かりになる」と手応えを感じていた。