竹中土木ら/力触覚技術による遠隔岩判定システム開発/熟練技術者の触覚判断を再現

2025年11月12日 技術・商品 [3面]

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 竹中土木ら3社は、「力触覚フィードバック技術」を使ってトンネル掘削時に遭遇する岩盤の硬軟などを把握、判定するシステムを開発した。熟練技術者による触覚的な岩盤判断が遠隔で可能になる。実現場で実証実験を行い、基本的な機能を確認した。打撃時の反力や速度など物理データを記録蓄積し、将来的には客観的判定手法の確立を目指す。
 「遠隔岩判定システム」は同社と加賀電子、モーションリブ(川崎市幸区、溝口貴弘社長兼最高経営責任者〈CEO〉)の3社で共同開発した。遠隔地にいながら物体に触れた感覚を人工的に再現する技術を活用。操縦側(Leader)と切羽側(Follower)の二つのシステムで構成する。力触覚情報を含むデータ通信で遠隔操作を実現する。
 力触覚フィードバック技術で切羽の岩盤を検査用のハンマーで打つ感触を再現。高所作業車を含め全装置が遠隔操作できる構造で、作業者は安全な場所から操作できる。ブレーキ付きハンドルとリモート操作可能な緊急停止・復旧機能を装備し、安全性も高めた。
 実証実験は「国道121号湯野上2号トンネル工事」(国土交通省東北地方整備局発注)で実施。坑口から1102・8メートル地点の切羽で行った。
 切羽後方約200メートルに設置した遠隔操縦室で岩盤を打撃。力触覚フィードバック機能で岩盤の硬さや柔らかさが感覚的に認識できることを確認した。作業者は安全な場所から、従来の打撃検査と近い感覚で岩盤の状態が把握できる。
 3社は、取得した物理データと実際の岩盤強度との相関関係を分析し、圧縮強度の定量的評価手法の確立を進めている。トンネル工事以外の建設分野にも遠隔物性判定技術の活用を見据える。特に人の近接が困難な場所や危険な作業環境での地質調査、構造物検査で安全性を高める技術として展開を目指す。