大林組ら/ダム本体工に3D流体解析技術/BIM・CIMデータ基盤に

2025年11月20日 技術・商品 [3面]

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 大林組と日立パワーソリューションズ(茨城県日立市、安藤次男社長)、日立製作所の3社は、ダム本体工事に3D流体解析技術を導入した。現地状況を正確に再現したBIM/CIMデータを解析基盤とし、ダムの放流状況を高精度にシミュレーションする。現実世界をデジタル空間に再現するデジタルツインの活用で、設計・施工方法の検討期間が従来の1年程度から3カ月程度に短縮。施工時の安全リスク評価も高度化できる。
 3D流体解析技術を導入した現場は、岐阜県八百津、御嵩両町で施工する「新丸山ダム本体建設工事」(発注者・国土交通省中部地方整備局)。既設ダムの機能を生かしながら堤体を約20メートルかさ上げして新設ダムを構築する。既設ダムと新設ダムの一部が重なる国内では初の構造形式のダム再開発プロジェクトになる。
 現場では新技術を用いて既設ダムの放流設備から下流の河道をモデル化し、放流時流量を想定した解析を実施した。ダム下流の施工現場付近の最大水位ととも被災リスクを高精度に予測。BIM/CIMで河床形状を詳細に解析し、放流時の流れを分析する。上流からの流れが護岸に衝突して生じる渦を巻く流れの様子とともに、同じ場所でも水面と川底で流れの速さが異なる状況などを断面図で把握できる。
 ダム湖から下流に通じる新設ダムの仮排水トンネルもモデル化し、所定の水位を想定して解析。トンネル吐口部で水の勢いを弱める状況や跳ね返る流れを再現し、流量や放流状況が確認できる。
 大林組によると、ダム建設現場は施工の進展に応じて現地状況が大きく変化する。設計段階で施工時の現地状況を加味した放流後の状況予測は困難。縮小模型を使った水理模型実験で設計・施工方法を検討するケースが多かった。
 同社は新丸山ダム本体建設工事で得た新技術の知見を踏まえ、デジタルツインによる現場管理をさらに高度化する。日立パワーソリューションズ、日立製作所とともにダム再開発工事への展開を目指す。