大阪工業大学ロボット工学科の研究グループは、地震や豪雨で発生する河道閉塞(いわゆる土砂ダム)の現場で、状況調査から排水作業までを遠隔で行う土砂災害対応ロボットシステムの試作機を公開した。二次災害が危ぶまれる現場作業を人力から置き換える。11月27日に同大枚方キャンパス(大阪府枚方市北山1)の「DXフィールド」で報道機関向けに公開実験を行った。
システムの中核はヘリコプターで運べる汎用搬送コンテナ「BRAINS(ブレインズ)」。高さ約2メートル、幅・奥行き各1・5メートルのコンテナ内部に昇降機構を備え、ロボットの上半身(作業機器)と下半身(移動基体)を着脱できる。災害現場で必要な構成に組み替えられるのが特徴。
公開実験ではブレインズに加え、移動基体の「MEGA(メガ)」と、作業機器の柔軟双胴クローラー「d-Flex-Craw(ディ・フレックス・クロー)」、排水ホース展張りロボット「i-CentiPot-Ammonite(アイセンチポット・アンモナイト)」を披露した。
ディフレックスクローは柔軟なクローラー機構を採用し、起伏や転石など“読めない地形”での走行性を高めた。メガは射出台(カタパルト)を搭載し、基体のみでは到達が難しい災害現場に作業機器を送り込むことができる。アンモナイトは排水ポンプとホース展張機構を格納し、土砂ダムからの排水作業を行う。
河道閉塞は河道が土砂によりせき止められ、上流側に水がたまる自然ダムの一種で決壊すれば大規模土石流を引き起こす。発災直後は道路寸断で大型重機が入れず、二次災害が危ぶまれる現場でのホース敷設や踏査といった初動作業が人力に依存する。研究グループはこうした状況に対し、複数ロボットを分離・合体させながら任務に当たる“システムとしてのロボット群”という概念を提唱した。
今後は2030年ごろに試作機の2~4倍の大きさの実証機プロトタイプを製作する。排水能力や走破性能など実災害を見据えた性能評価も見据える。研究は内閣府のムーンショット型研究開発制度(目標3=協働AIロボット)による支援の下で、可動閉塞への対策技術をテーマに複数大学・企業が連携している。
研究グループを率いる同大の大須賀公一教授は「公開した機体はあくまでロボット群が分離・合体しながら作業するシステム原理を検証するためのモデル。今回の成果は方法論の提示にある」と説明した。






