清水建設がダムの洪水調整能力を増強する工事で、山岳トンネル工事用の自由断面掘削機を使って堤体を削孔し貫通孔を設けた。放流設備を既設より低い位置に増設し、貯水位が下がっても放流でき、洪水調節容量を最大限確保した状態で洪水調節が可能となる。同社は今後、現場で得た知見を基に技術提案を推進。豪雨災害の軽減に向け洪水調整能力を増強する工事の受注につなげていく。
愛媛県の1級河川肱川の最上流部に位置する野村ダム(西予市)の改良工事に適用した。発注者は国土交通省四国地方整備局で、施工予定者が設計などを支援するECI方式を導入。清水建設が施工を担当している。工期は12月まで。
貫通孔は幅と高さが各5・4~9・0メートル、延長は31・5メートル。自由断面掘削機で1次削孔した後、スパイキーハンマー(空圧はつり機)で2次の仕上げ削孔を行う。水の流入を防ぐため、U字型の仮締め切り設備「扉体ブロック」で貫通部を覆いながら作業する。
工場製作した扉体ブロックの構成部材を3体ずつ現場に搬入し、溶接してユニット化する。陸上の大型クレーンで14体のユニットをダム湖内の台船上につり込む。続いて別の台船上のクレーンで底部ユニットから順に水中へつり込み、作業員が上下段のユニットをボルトで固定し、浮力やバランスを調整しながら沈めていく。
こうした作業を繰り返し、水中で高さ38メートルの扉体ブロックを組み立てる。その後、陸上のクレーンで扉体ブロックを堤体上流側の所定位置につり込んでボルト締結。内部の水を抜き、水圧をかけて堤体と一体化する。
山岳トンネル用の測量機器で削孔精度を管理。プラス50ミリ以内の許容値を満たすことができた。貫通孔の完成時、事前放流水位EL(標高)160・2メートルまで貯水位を低下させた状況でも、1秒当たりの洪水調節開始流量500立方メートル放流が可能となった。








