清水建設は、ダムやトンネルなどの大規模土木工事で運用している「夜間工事照明影響評価システム」を改良した。ＬＥＤ灯の色温度と気温条件を反映したシミュレーション機能を追加。季節や地域特性が建設地周辺の生態系に及ぼす影響評価が反映できるようになり、費用対効果の高い照明計画が立案しやすくなった。
　同システムは、夜間工事の照明で昆虫類が誘引・死滅し失われる餌資源のカロリー量から、食物連鎖の中位・上位生物に与える影響度を定量算出する。従来は水銀灯やナトリウム灯、ＬＥＤ灯といった照明の種類や光量ごとに評価していた。
　既に水銀灯の生産が終了し、ここ数年でＬＥＤ灯が普及したため、照明の色温度別検証も進展。白色ＬＥＤよりも暖色ＬＥＤの方が昆虫類の誘引率が低いと分かった。暖色ＬＥＤは白色ＬＥＤに比べ消費電力が大きく、コストも多くかかる上、視認性が低いことも判明。単純な置き換えは難しいという課題が浮き彫りになった。
　同社は、６現場で計３３万匹の昆虫を捕獲・分類・カウントする誘虫試験を踏まえ、ＬＥＤ灯の色温度別に評価できる改良版システムを構築した。▽現場周辺に広がる水田・森林・草地などの面積割合▽特定期間の平均気温▽照明の種類や台数－の各項目を入力すると、照明に誘引される昆虫類の種別・数量や失われる猛禽（もうきん）類の餌資源量、照明コストが即時に算出可能になる。
　照明の色調や気温条件を変更すれば餌資源量やコストも更新される。環境対策効果と経済性のバランスに考慮した最適な照明計画が立案できる。
　自然豊かな山間部の現場が多いダムやトンネルなどの土木工事では、ネイチャーポジティブ（自然再興）の観点から生態系保全の重要度が高まっている。改良版システムをダム・トンネル工事などの技術提案、照明計画コンサルティング業務に積極活用する予定だ。