建築へ/フランクミュラーハウス01/設計・施工は諸戸の家(三重県桑名市)

2025年12月19日 論説・コラム [12面]

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 ◇ブランドの美学を表現 世界で唯一の邸宅誕生
 東京都目黒区の閑静な住宅街に、スイスの高級機械式腕時計ブランド「フランク ミュラー」の美学を建築空間に落とし込んだ邸宅「フランク ミュラーハウス01」が完成した。フランク ミュラーが監修し、高級住宅を手掛ける「諸戸の家」(三重県桑名市、松本浩二代表取締役)が設計・施工を担当。外壁に配したウオールクロックが象徴的で、ブランドの世界観を余すことなく表現している。現地で同社の吉川政弘常務に話を聞いた。
 「フランク ミュラーには『時を楽しむ』というコンセプトがあり、諸戸の家には『家での暮らしを楽しんでもらう』という考えがあるので、楽しむという部分でコンセプトの親和性もとても高かった」(吉川常務)。
 諸戸の家が手掛ける住宅にフランク ミュラーの家具を取り入れたことを機に、協力関係が始まった。2024年には、東京都世田谷区で「弦巻の邸宅 with FRANCK MULLER」が完成。今回は協業をさらに進め、フランク ミュラーの監修の下で設計・建築に踏み込んだ。
 237平方メートルの敷地に、木造2階建て延べ292平方メートルの住宅を建築した。着工は3月。10月に竣工し、11月からクローズドで販売している。価格は8億円台後半に設定した。
 諸戸の家は「子どもの成長に合わせて一戸建てに移る家族は4LDKを求める」との考えがベースにある。目黒の邸宅も4人家族の居住を想定し、4LDKで設計した。
 外観は、フランク ミュラーから提供されたコンセプトアートを基に構成。外壁のウオールクロックと、流れるようなフォルムが特徴の「ビザン数字」柄が透けて見える格子を必須要素として組み込んだ。ウオールクロックはこの邸宅のためだけに制作された一点物で、針の製作に約4カ月を費やしたという。夜間はライトアップされ、存在感を際立たせる。格子は視認性を考慮し、2階に配置している。
 「角地のため、建物を大きく立派に見せたかった」と吉川常務は話す。外壁に段差を設け、立体感を強調。下部にはフランク ミュラーの監修を証明する銘板も設置した。
 内装はフランク ミュラーと協議を重ね、ベージュとゴールドを基調に統一。壁紙は部屋ごとに柄を変え、家具はすべてフランク ミュラー製を採用した。壁紙や室内オブジェはいずれも特注品だ。
 玄関には上がりかまちとは別にシューズクロークを設け、家族はそこから邸内に入る動線とした。玄関を来客専用とすることで、清潔感を保てる。
 1階には子ども部屋と寝室、シャワールーム、ゲストルームを配置。ゲストルームはガラス越しに車庫を望む設計で、「車を眺めながらくつろいでほしい」という遊び心を加えた。寝室にはウオークインクローゼットを備え、姿見もフランク ミュラー製というこだわりようだ。
 1階から屋上までを結ぶ階段は、寸法を調整して上りやすさを追求。室内エレベーターも備え、2階にはリビングとダイニングを配置した。バルコニーには格子を設け、外部からの視線を遮っている。
 来客時に目につきやすい場所は生活用品を隠せる収納とし、動線にも配慮した。浴室や洗濯室にはガス乾燥機を設置し、室内で洗濯を完結できる。屋上にはルーフバルコニーを設け、「非日常感の中で暮らしを楽しむ」空間を演出している。
 邸宅のコンセプトは「30年後も資産価値を残す住宅」。国内の木造住宅は完成から20年が経過すると資産価値がほぼゼロになるとされる。こうした流れに一石を投じるように、フランク ミュラーとの共同プロジェクトという付加価値で、時間が経過しても評価される資産価値の高い住宅を目指した。実際、諸戸の家が名古屋で手掛けた別の邸宅は、中古にもかかわらず新築時以上の価格で取引された例があるという。
 名称に「01」とナンバリングしたように、第2弾以降の展開も視野に入れる。吉川常務は「米国進出にも挑戦したい」と語り、国内外での展開を見据える。

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