企業の組織改革は、大抵「よかれと思って」始まる。意思決定を速め、責任を明確にするためだ。掲げる旗は、いつも正しい。だが現実には、その善意が、いつの間にか誰も決断しなくて済む構造に姿を変えていることが少なくない▼スピード重視、意見尊重を掲げた仕組みが、確認と共有の手間を増やす。「念のため」「万一に備えて」という言葉は便利だ。反対されにくく、誰も傷つかない。その一方で、判断の責任だけが薄まり、所在を失っていく▼慎重さを否定するつもりはない。速さと正確さの両立は難しく、多くの成功が拙速を避けた結果なのも事実だ。だが、その姿勢が固定された瞬間、慎重さは思考停止の言い換えに変わる▼成功体験を温存するための制度は、挑戦を守るふりをして意欲を殺す。しかもそれは、誰かにとって都合のいい逃げ道にもなる。決めなかったのではない、決められなかったのだ--そう言い換えれば、個人の判断力や覚悟は問われずに済む▼問題は慎重さではない。制度の外に立ち、何が滞っているのかを問い直せなくなった時、組織は描いた青写真を理由に、決断する人間を必要としなくなる。







