商習慣を変える3-標準労務費始動・5/「賃金」端緒に建設Gメン動く

2026年1月26日 行政・団体 [2面]

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 ◇通報の機運広がる、問われる実効性
 岡山県建設業協会は自主的な取り組みとして「Gメン通報制度」を2024年12月に始めた。下請や技能者へのしわ寄せが疑われるダンピング受注の情報提供を会員企業に寄せてもらい、国土交通省の建設Gメンにつなげる。定常的に一定数の通報があるが、荒木雷太会長によると「副次的な効果として、地方整備局に直接通報する人が増えている」。建設業法違反の疑義情報の窓口となる「駆け込みホットライン」の受け付け件数が増えたことを確認しているという。
 荒木会長は「機運としては緩やかだが、『泣き寝入りしない』という意識が広がってきたのではないか」と推測する。改正建設業法の公布・施行を契機に、将来の不利益などを恐れて以前は「仕方がない」と諦めていた取引上の不当行為を訴える声が、水面下からボコボコと噴き出ようとしている。
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 「労務費に関する基準(標準労務費)」を実際の現場で機能させるには継続的な監視が必要だ。法施行直前の中央建設業審議会(中建審)総会では、契約・支払い段階の実効性確保策の有効性を検証するフォローアップを元下双方の業界関係者が共通して求めた。「守らなくても大丈夫じゃないか」という雰囲気のまん延は避けなければならず、抑止力となる建設Gメンへの期待は大きい。
 実効性確保策は、個々の契約で労務費を確保する対策だけにとどまらない。最終的な賃金の行き渡りにも重点を置く。建設業者には契約当事者としての振るまいだけでなく、技能者を雇用する会社としての誠実な対応が求められる。
 国交省は「建設キャリアアップシステム(CCUS)レベル別年収」を法施行に合わせ刷新。公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合の水準となる「目標値」と、最低限支払うべき下限の水準となる「標準値」の2パターンを用意した。目標値以上の支払いを推奨しつつ、標準値を下回る支払い実態がある建設業者には労務費ダンピングの恐れがないか重点的に調査すると明言する。賃金の多い少ないに基づき、建設Gメンが動ける仕組みをつくったことになる。
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 技能者本人が自らの賃金実態とレベル別年収を見比べるなどして、処遇に不満がある場合に直接通報できるシステムも構築する。27年度に試行運用する方向だ。駆け込みホットラインなど既存の窓口と異なり、通報に当たって法令違反に該当するかどうかを問わない。給与明細や労働実態などの情報を入力してもらい、判断材料とする。これを端緒情報に建設Gメンが雇用主を調査し、取引適正化を促すことも想定する。
 今までになく積極的に情報を集める姿勢が目立つが、それを十分に生かせる体制を構築できるか。建設Gメンが活発に動いているという反応は、業界側からまだ聞こえてこない。賃金支払いや働き方の調査・是正指導に直接的な権限を持つ労働基準監督署との連携強化を求める声は多い。時間外労働の上限規制の適用前から労基署との合同調査の枠組みはできている。各地域の現場レベルで機動的に連携する体制が整えば実効性は一段と高まるだろう。