国土交通省は、建築分野全般の中長期ビジョンの素案を明らかにした。2050年を見据え、今後10年程度の施策の方向性を提示する。建物を「造る」だけにとどまらず、既存ストックも含めてライフサイクル全体で「使いこなす」社会の将来像と、実現方策を列挙。新築・既存を問わず建物を適切に評価し、使い方や改修で価値を維持・向上させ、継承する社会システムへの転換を提案する。建築の専門家以外の所有者や「(建物を)使う人」を含めて「担い手」と定義し、それぞれが建物に主体的に関わる重要性を強調する。
社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会・建築基準制度部会の合同会議が26日に開かれ、ビジョン具体化へ設置された有識者会議「建築分野の中長期的なあり方に関する検討会」の提言として素案が提示された。ビジョンは建築分科会で最終的に取りまとめ、27年2月に国交相へ答申する。
素案では建物や市街地の価値を、▽モノ(建物の性能や機能)▽ヒト(担い手)▽コト(社会基盤や仕組み)ーの3要素と「技術」の活用で最大化するバランスシートの考え方を示した。既存建物は「モノ」の側面だけで価値を継続的に高めるには技術面・費用面で限界があると指摘。適切な維持管理や利用条件の設定、保険・保証などの「ヒト」「コト」を組み合わせ、既存ストックを生かした価値向上が可能だとした。
検討会座長の松村秀一神戸芸術工科大学学長は「既存ストックは十分な量があり、質的にも充実している。この豊かさを、国民が暮らしや建物利用で十分に享受できるか。今までにない課題がある」と話した。建築の専門家だけでなく、より多くの担い手が考え方を共有し行動することでビジョンの実現は近づく。国交省には提言を踏まえた施策の具体化を求める。
素案では建物を「使いこなす」ため利用・改修・継承を繰り返し、使い終わるまでの流れも提示。時間の経過で一律に価値が低下する考え方に異議を唱え、維持管理や用途変更を促す建築規制の見直しなどを視野に入れる。会合では、既存建物の状態や改修効果などを評価し、取引や融資の判断につなげる仕組みの必要性も指摘された。








