日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が会員企業を対象に2024年秋に行った調査で、時間外労働の上限(原則月45時間以内)を超えた土木現場が約4割あることが分かった。生産性向上の取り組みなどをさらに進めた結果、前回調査と比べ大幅に改善したものの、資機材を搬入する物流業界への規制適用、生コンクリート打設やクレーン作業の時間制約といった新たな課題も影響している。日建連は受発注者が連携してさまざまな取り組みを講じ、時間外労働のさらなる削減を目指す。
調査は会員企業58社を対象に2024年11、12月にかけて実施。23年10月~24年9月末に竣工したか施工中だった3億円以上の土木工事(高速道路や鉄道など民間工事を含む)の現場に対し時間外労働に関する実態や課題などを聞いた。1465現場の回答を集計した。
時間外労働が月45時間以内、年間360時間以内の原則規制に抵触する社員がいる現場は39%となり、前年調査から28ポイント改善した。発注機関別に見ると、「国土交通省(道路・河川)」が37%(前回68%)、「同(港湾・空港)」が22%(57%)、「地方自治体」が31%(62%)で抵触。「高速道路会社」が54%(73%)、「機構・事業団」が58%(71%)と5割以上の現場で原則規定を守れていない。
時間外労働の削減に向け、発注者に求める取り組み(複数回答可)を聞いたところ、「当初発注における適切な工期設定」が44%と最も多く、「提出書類の削減」(36%)、「条件変更に伴う適切な工期延期」(33%)と続いた。適切な工期設定と延期、提出書類の削減などが求められる。
24年4月に建設業と同じく物流業にも時間外労働上限規制が適用された。これによる影響(複数回答可)を聞いたところ、「資機材や運搬費のコストが上昇した」(36%)、「資機材の搬入日や納入時間の指定が難しくなった」(22%)との声が上がった。時間外労働上限規制の影響を考慮した積算基準や歩掛かりの見直しを求める声も多く寄せられた。
日建連は発注機関に対し、▽資材価格の調査方法を改善した上で予定価格への適切な反映▽スライド条項などを活用したコスト抑制や契約変更への対応▽工事発注前に発注者側でヤード(資機材などの保管や資機材運搬車両の待機場所)の確保-などを求める。