民間建築工事で時間外労働上限規制を順守できる「適切な工期」の取り組みが着実に進んでいることが日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の調査で分かった。2024年度下期(24年10月~25年3月)に契約した民間発注の建築工事を調べたところ、初回見積もりでの適切な工期設定は、発注者からの指定も含め全体の91・7%を占め、前回調査の24年度上期(24年4~9月)を2・0ポイント上回った。初回見積もりの94・7%が契約に反映された。
日建連は23年に「適正工期確保宣言」を決定。時間外労働の上限規制順守を目的に、初回見積もりで4週8閉所などを原則とする工期を提示する取り組みを展開している。調査は同宣言のフォローアップとして▽初回の見積もり提出時の状況▽契約時の反映状況-などを把握するため半年ごとに行っている。今回は初回見積もりが23年10月以降、契約が24年10月~25年3月。会員企業140社中97社が回答した。
24年度下期に提出した初回見積もりの総数は全体で2331件。うち建設会社自ら適切な工期で提出したのは1606件(68・9%)、発注者から適切な工期を指定された見積もりは531件(22・8%)となり、計2137件(91・7%)が初回見積もりで適切な工期を提示した。発注者が指定した工期を基に見積もり書を作成し、時間外労働上限規制を順守できる「真に適切な工期」を説明している件数は147件(6・3%)あり、全体の98%で同宣言を推進。日建連は「かなり成果が出ている」と評価している。
適切な工期を提示した初回見積もりのうち、94・7%(前回調査比1・0ポイント上昇)となる1498件で工期が契約に反映された。うち建設会社自ら適切な工期に基づく見積もりを作成したのが88・0%。発注者の指定工期に対して適切な工期について説明し、理解を得て適切な工期で契約に至ったのが5・9%だった。
真に適切な工期が契約に反映されなかった工事は5・3%。特徴を見ると「改修工事のため工事日が土日祝日に限定されていた」「夜間作業を取り入れた短工期で受注せざるを得なかった」などが上がった。
真に適切な工期について、原則すべての案件で取り組んでいるのが48社(61・5%)、75%以上契約しているのは19社(24・4%)あり、約8割の会社が真に適切な工期を反映。適切な工期でないと判断した場合は受注回避している社もあり、適正工期の徹底に取り組んでいる。建設業の時間外労働上限規制が認知されつつある中、日建連は「周辺環境が整ってきている。適正な工期が定着するといい」とした。