スコープ/熱中症の危険を回避せよ!!、能率協会の猛暑対策展が盛況

2025年7月30日 技術・商品 [12面]

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 暑さ対策の製品やサービスが一堂に会する展示会、第11回猛暑対策展(日本能率協会主催)が23~25日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。今回は規模を拡大し、119社が222ブース(前回84社144ブース)を出展。入場者数は3日間で、併催する労働安全衛生展と騒音・振動対策展と合わせ1万6802人と、2024年実績(1万2323人)を大きく上回った。猛暑対策展の盛況ぶりは出展側、来場側双方の関心の高さをうかがわせる。熱中症対策のトレンドを追った。
 近年の異常な暑さを受け、職場での熱中症の重篤化対策を事業者に義務付けた改正労働安全衛生規則が6月1日に施行された。「熱中症を生ずる恐れのある作業」に従事する労働者の異変を素早く発見し適切に対処するため、事業者は体制と手順を整えて関係者に周知しなければならない。
 対象は暑さ指数(WBGT)28度以上か、気温31度以上の環境で連続1時間以上か1日4時間超の実施を見込む作業だ。WBGTは気温や湿度、風速などを踏まえ暑熱環境で過ごす人の負担の程度を表す。
 猛暑対策展では来場者の要望を受け、実際に用具を使う感覚を知ってもらうために倉庫を再現した「リアル体感フィールド」を新設した。ファン付きジャケットや水冷ベストなど10企業の製品を試せるようにした。
 スポーツ用品大手のミズノは、通気性を大幅に高めたワークシューズを出展。自社ブースではシューズに白煙を入れて通気性能を視覚化した展示を披露した。同社はここ数年、運動用具のノウハウを生かし産業分野を対象にした「ワークビジネス」に注力。2024年に発売した蒸れにくい安全ヘルメットなど複数製品を取りそろえた。同社ワークビジネス事業部の担当者は「クーリングアイテムの要望は多く建設業にもアピールしたい」と意気込む。
 ヘルスケア事業を手掛けるスタートアップ「MEDIROM MOTHER Labs」(東京都港区、植草義雄社長)は、体調の遠隔管理システム「REMONY」(リモニー)を携え初めて出展。温度差発電技術により充電を不要とした腕時計型端末が強みだ。端末で装着者の体表温や歩数、心拍数などバイタルデータを計測し、異常を検知すると管理システムに警報を送る。着脱せずに済むため、24時間欠損なくデータを取得できる。もともとは老人ホームでの介護利用を想定し開発したが、工事など現場仕事の健康管理にも応用できると見込み需要の掘り起こしを狙う。
 展示会では作業者本人の体調を暑さから守る製品に加え、熱中症を引き起こしやすい環境を把握し、予防につなげるためのソリューションが数多く並んだ。
 大林組グループのオーク情報システム(東京都品川区、安井勝俊社長)は、WBGTなどの環境測定値を一元管理するクラウド型システム「SisMil」(シスミル)を紹介した。自動計測した温湿度などのデータに基づき、WBGTを算出。親機1台につき子機30台まで接続できるため、複数箇所の測定値をまとめて確認できる。建設現場向けの製品だが、工場や学校の体育館、スポーツイベント会場と導入が広がる。営業担当者は「例年に比べ来場者の関心が相当高い。WBGTにも詳しく、しっかり測りたいという声が多い」と変化を話す。
 大手気象情報会社のウェザーニューズも初めて出展した。予測地点を絞ったピンポイント天気予報や熱中症危険度指数など幅広い気象データを活用した「ウェザーテック」サービスを打ち出す。展示した「ソラテナPro」は専用装置で気温や風速など七つの値を観測し、WBGTを算出。設置場所の熱中症リスクを可視化する。結果の通知機能により、離れた場所でも現地状況を把握できる。営業担当者は「熱中症対策の義務化で工事現場での採用が特に増えている」と語る。
 厚生労働省の調べでは、24年の職場での熱中症による死傷者数は年間1257人に及び、統計を始めた05年以降で最多を記録した。直近5年間(20~24年)の業種別死傷者数は建設業が死傷者961人(うち死者54人)。死傷者数、死者数とも全産業で最も多かった。
 気象庁が22日に発表した3カ月予報によると、地球温暖化の影響などで日本を含む中緯度帯を中心に地球の大気全体の温度が高まる見通しだ。8~10月は全国的に暖かい空気に覆われ、平年より気温が高い状態が続くと予想される。
 もはや昔の夏ではない。企業には熱中症を防ぐため、あらゆる観点で対策を講じる姿勢が求められる。