秋田県沖の洋上風力発電/三菱商事が再公告を支援、地域共生策は継続検討

2025年9月8日 工事・計画 [6面]

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 三菱商事などの企業連合が撤退を表明した秋田県沖2海域の洋上風力発電事業が、再出発に向けた議論を始めた。経済産業省や漁業者など地元関係者が出席した4日の法定協議会で再評価の経緯などを説明した三菱商事は「迅速にバトンをつなぐため、必要になるあらゆる手伝いをさせていただく」と強調。蓄積してきた知見やデータを提供し、次回事業者の選定プロセスの短縮に協力する方針を示した。地域共生策の継続も検討すると表明。経産省は年内をめどに公募要件の方向性をまとめる。
 三菱商事らは2021年12月に国が再エネ海域利用法に基づき公募した第1弾の洋上風力発電事業者に選定された。秋田県内の対象は「由利本荘市沖(北側・南側)」「能代市、三種町及び男鹿市沖」の2海域。いずれも鹿島が洋上風力発電設備の主要部分を施工する予定だった。
 各自治体と締結した包括連携協定に基づき取り組んでいるAIオンデマンド交通やカキ養殖などの事業実証支援、地域・漁業共生策、地域課題解決などの地域共生策は「着実に完遂する」方針だ。洋上風力事業をきっかけに開設した同社秋田支店(秋田市)は、他事業や地域課題解決の拠点として活用する。
 地元首長らは地域共生策の存続を求め、今後も協力関係を維持するよう要望した。齊藤滋宣能代市長は「市民の期待が大きかったので困惑も大きい」とコメント。国主導で基地港湾としての整備が進捗する能代港を巡り「同社の利用を想定した期間もある。他事業での活用などを検討してほしい」と求めた。田川政幸三種町長は、撤退はやむを得ないとしつつ「次につながる力添えを」と要請。菅原広二男鹿市長は市の中核産業である漁業振興など、地域共生策の継続を求めた。
 漁業関係者からは複雑な反応が寄せられた。秋田県漁業協同組合の杉本貢代表理事組合長は「国には一日も早く、今後の道筋をつけてほしい」と要望した。
 協議会は次回以降、再公募を前提にした意見見直しの議論に入る。地元からは「海域で発電した電気を地元で消費できないのか」などの声も上がっており、今後の再公募では地域へのさらなる還元策も重要な検討課題になりそうだ。