土木学会/池内幸司会長が全国大会で講演/土木分野のCN、施策体系化し改善策提言

2025年9月12日 行政・団体 [1面]

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 土木学会の池内幸司会長は、熊本市内で開催中の2025年度全国大会で10日に基調講演し「カーボンニュートラルでレジリエントな社会を目指して」をテーマに語った。カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みは土木分野でも広がっているが、機関ごとの実践にとどまる現状に触れ、「規制や制度が横展開を阻んでいる」と指摘。土木分野の施策を体系化し「具体的な改善策を提言・発信していく必要がある」と強調した。=11面に関連記事
 池内会長は、1時間50ミリ以上という大雨の発生頻度が過去40年で約1・5倍に増えたデータを示し、「洪水リスクが高まり、治水施設の整備だけでは対応できない危機的状況」と説明。その上で「水害を自分事と捉え、いざという時の行動を考えることが重要」と述べ、住民を含む関係者が協働する流域治水の拡大を訴えた。
 世界的に掲げられる「2050年CN達成」を「重要なマイルストーン」と評価しつつ、短期目標に偏ると「長期的課題を先送りする恐れがある」と警鐘を鳴らした。橋梁やダムが100年以上供用される例を挙げ、「100年スパンの長期的視点を持つべきだ」と提案した。
 さらに、建設工事に伴う二酸化炭素(CO2)排出量の算定基準や発注評価手法が未整備であるなど、既存の規制や基準がCN推進の障壁になっている点も問題視。現状の施策は「環境政策の域を出ず、地図に落とし込んだ具体像が不十分」と批判し、エネルギー政策や国土利用計画、インフラ整備を一体的にとらえた「CNを支える国土のグランドデザイン」を描く必要性を訴えた。