清水建設ら2社が盛り土工事の工程(トレーサビリティー)管理業務を大幅削減する技術を共同開発した。DXによって膨大な書類で対応している工程管理を効率化。施工履歴や工事情報、土砂運搬履歴、品質管理記録のデータを盛り土工事の3Dモデルとひも付け蓄積、整理する。西日本高速道路会社が発注し、大阪府高槻市で施工中のトンネル工事に関連する大規模盛り土工事に初適用。生産性向上に効果を発揮している。
新技術は、盛り土工事の品質・トレーサビリティー管理システム「Shimz Smart Earthwork Logs(SSEL=エスセル)」として、EARTHBRAIN(東京都港区、小野寺昭則社長)と共同開発した。
エスセルの特徴は、技術的に確立されたシステムを組み合わせたことで、専用ソフトやハイスペックのパソコンがなくても受発注者間で必要な情報を共有できる。パソコンで標準的なブラウザーが使用できれば、時間や場所を問わず必要なデータにアクセス可能。土質試験や工程管理結果の入力システム、市販のIoTデバイスを搭載した土砂積め込み建設機械と運搬車両、市販のICTブルドーザーや転圧ローラーなどからクラウド経由で送信されるデータについて、一元管理するデジタルプラットフォームとして運用する。
エスセルの適用ですべての施工プロセスに必要なデータを自動取得し、デジタルプラットフォームに送信する。プラットフォームでは転圧ローラーから送信される受け入れ土砂の転圧範囲や巻き出し厚などのデータから盛り土の3Dモデル(ボクセル)にデータを格納。対象土砂の属性情報として一連の管理データをひも付け、蓄積していく。施工や維持管理のデータ確認作業の効率を大幅向上。平時や災害などの緊急時を問わず、受発注者間で瞬時の情報共有・確認が可能になる。
「新名神高速道路梶原トンネル工事」に伴う道路本線外の大規模盛り土工事では、トンネル工事の進捗に合わせて約60万立方メートルを盛り土する。今月中旬時点で施工量約15万立方メートル。システムで省人化やコスト削減の効果が出ている。現場の「土捨場工区」では施工データ確認に必要な人員を1日当たり1人から0・5人、施工履歴データ確認の人員を同2人から1人に削減できた。1日の費用削減効果は現場管理全体で約8万5000円を見込む。
システムの導入を先導した清水建設の重岡知之工事長は「盛り土工事のオールインワン管理システム」と位置付け、他の盛り土工事現場への展開にも意欲を見せる。EARTHBRAINの平田柊作氏は、近い将来の市販化も視野に入れる。