大成建設は、山岳トンネル底盤部(インバート支保)全体の変形挙動を自動監視する変位計を開発した。施工時に懸念される地山の隆起や沈下といった変位分布を詳細に把握。底盤部の地盤が膨れ上がる「盤膨れ」現象などを確実に捉え、地山の変位に応じた効果的な対策工事に役立てる。膨張性の地山が広がる日本海側のトンネルを中心に展開し、トンネル以外の構造物にも適用範囲を広げる。
多点連続式変位計「T-Invert Monitor」として開発した。山形県鶴岡市で施工する「国道7号鼠ケ関トンネル」(発注者・国土交通省東北地方整備局)の現場計測試験などを経て、計測精度の高さや優れた作業効率を確認した。
変位計は、任意に設定した時間ごとに自動計測できる。インバート支保の変形を遠隔からも常時監視可能。変位センサーを内蔵した直径25ミリのケーブル状計測装置を使用する。1ユニット当たり長さ50センチの装置をナックルジョイントで連結し、ユニットの数に応じた多点の変位量を同時取得する。従来の単点計測で困難だった変位分布を把握し、トンネル横断面のインバート支保全体の変形状況が捉えられる。
設置や再利用も容易になった。インバート支保に沿って埋設した直径65ミリの「計測ガイド管」に収納、挿入した後、速やかに自動計測する。任意地点で計測した後、計測ガイド管から引き抜いて回収。異なる計測地点にある別の計測ガイド管に挿入して転用可能だ。
鼠ケ関トンネルの現場では、インバート全断面に全幅16メートルの計測装置を敷設。計測ガイド管への挿入は3人で1時間半程度、回収は2人で約5分だった。
一般的な山岳トンネル工事では、インバート支保の施工後も地山の変位計測を継続する必要がある。ただ底盤部は資材搬送路として利用されるため土砂などで埋め戻され、従来の測量法では目視できない路盤下の変形計測は困難。盤膨れなどの変位分布を監視できるようにした。