国土交通省の次期「技術基本計画」を検討している有識者会議で、各地域の公共工事現場などで有用な技術の活用を適正に評価し、普及させていくための仕組みや体制の整備を求める声が多く挙がった。2026年度からの次期計画は、産学官・異分野の多様な組織が協働・共存する「イノベーション・エコシステム」の確立を目指す方針。新技術の開発・実装に限定せず、地場の中小建設会社にこそ必要な技術の継承や水平展開といった観点をエコシステムに組み込む方向で検討する。
3日開いた社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)・交通政策審議会(交政審、同)技術分科会技術部会で次期計画の骨子案をベースに有識者委員らの意見を聞いた=写真。骨子案は分野横断的に技術の開発・実装を支える仕組みづくりに重点を置き、大学やスタートアップと連携した研究開発の推進や、直轄工事を発注する出先事務所への支援を通じた新技術の導入促進をうたう。
羽藤英二東京大学大学院工学系研究科教授は、公共工事の入札が価格重視で「技術継承や地域雇用への寄与が評価されにくい」と指摘し、「地元の建設業者が第一線で活躍するため、平時の調達の仕組みや、技術力を評価する仕組みを工夫していく」ことを提案。永谷圭司筑波大学システム情報系教授は、現場で必要とされる技術を地域の隅々まで浸透させるため「うまくブレークダウンした技術を中小建設会社に広げていく仕組みや枠組みが必要だ」と訴えた。
これ以外にも中小企業の技術活用を伴走支援する仕組みや、地方自治体のマンパワー不足や予算制約から生じる技術導入の格差解消の必要性を指摘する声があった。部会長を務める小澤一雅政策研究大学院大学教授も、新技術に限らず現場に必要な技術を選択・活用する仕組みや体制をエコシステムに組み込むことを国交省に求めた。
次期計画は、建設業団体などへの個別ヒアリングなども参考に原案を12月にまとめ、意見募集を経て年度内の公表を目指す。