日本トンネル専門工事業協会(トンネル専門協、横山英樹会長)は17日、秋田県横手市内で施工中の「秋田自動車道山内トンネル4車線化事業」の現場で、会員企業向けの見学会を開いた。既存トンネルの横に新たな2車線トンネルを構築している。見学会には会員企業の幹部ら約45人が参加。自由断面掘削機での堆積粉じん対策や施工時の安全対策などで意見を交わした。
秋田道は岩手県北上市の北上JCTから秋田市を経由し、秋田県小坂町の小坂JCTまでを結ぶ延長約210キロの高速道路。北上JCT~大曲IC区間は暫定2車線で供用されているが、災害時のリダンダンシー(冗長性)の確保、並行する一般道の代替路などを目的に2019年9月、4車線化優先整備区間(北上西IC~大曲IC間延長約43キロ)に選定された。
山内トンネルは湯田ICと山内PAとの間に位置し、横手市黒沢(起点)~山内筏(終点)を結ぶ。工事延長は3133メートル(本線土工部含む)で、うちトンネル工事の延長は2438メートル。発注者は東日本高速道路東北支社。施工は元請が奥村組、下請が村崎建設。工期は22年8月3日~27年7月7日を予定している。
見学会の冒頭、トンネル専門協の竹本茂技術・情報委員長は「トンネル現場は自動化技術やAIを活用した技術などが導入され、大きく変わりつつある。他社が施工する現場を見る機会は少ないと思う。新技術や安全・労務対策などをしっかりと見ていただき、自社の現場に生かしてほしい」とあいさつした。
工事は終点側(山内筏)から起点側(黒沢)に向けて掘削している。トンネル断面は幅員約12メートル、高さ約8メートル、断面積72・8平方メートル。施工方法はNATMで、機械掘り。非常駐車帯6カ所(左右各3カ所)、避難連絡坑3カ所(断面22・2平方メートル)。盤膨れの恐れがあるため、全線でインバートを施工している。
坑内に入ると、機械掘削で発生する堆積粉じんがほとんどなく、想像以上に視界は良好だった。国内に2台しかない大型自由断面掘削機(ブームヘッダー)やズリ出し用のダンプトラックも汚れが少ない。支保工やロックボルトが整然と設置され、吹き付けコンクリートもきれいに仕上がっていた。掘削は24年11月に開始され、現在1617メートルの掘進を終えている。
施工を担当する村崎建設の野村貴之所長は「昼夜2交代制で1日当たり5~6メートルを掘り進んでいる。工事は順調で、幸いなことに湧水が少ないため、現場をきれいに保てている。安全・環境対策は作業員一人一人に意識を持ってもらうことが大事なので、その点は徹底している」などと説明した。
見学会後に開いた意見交換会で、横山会長は「坑内がきれいに整理整頓されている感じだった。ぜひ見習いたい。全国のどの現場もこの現場のように環境対策や安全対策の徹底をお願いしたい」と感想を語った。参加者からは豪雪対策などの質問が出された。野村所長は「冬季も坑内作業は継続して行うが、ズリ出しの運搬ができなくなるため、1万立方メートル規模の仮置き場を3カ所設け、11月中旬から仮置き場にいったん運び雪が解けてから搬出する」と答えた。
貫通は来年5~6月を予定。見学会には建設業振興基金(振興基金、谷脇暁理事長)や建設経済研究所(RICE、吉田光市理事長)の関係者らも参加した。