東日本大震災から14年が経過し、伝承活動が大きな局面を迎えている。震災伝承団体の3・11メモリアルネットワーク(武田真一代表理事)が行った調査によると右肩上がりだった岩手、宮城、福島被災3県の震災伝承団体、施設の来訪者が2024年に初めて減少に転じた。各施設や団体からは担い手、活動資金の見通しが立たず継続を不安視する声が多く挙がっているという。武田代表理事は存続するため「広域の被災地域で連携することが重要だ」と強調する。
3・11メモリアルネットワークは効果的な伝承方法や目指すべき方向性を定めるため、2017年から「東日本大震災伝承活動調査」を実施。同調査はみちのく創生支援機構との「東日本大震災の伝承に関する研究調査の連携・協力に関する協定」により研究支援を受けている。22日には1月に行った来訪者数調査と7~8月にリサーチしたアンケートの結果発表会を宮城県石巻市内で開いた。
報告によると、民間の語り部が中心となる震災学習プログラム実施団体の96%(前回92%)、震災伝承施設運営施設の69%(68%)が伝承活動の継続に不安を抱いている。3年後に「活動資金の見通しがある」と答えた伝承施設は前回の71%から51%に激減し、伝承団体は43%にとどまった。30年後に語り部などの人材確保を見通せる伝承団体はゼロだった。
第2期復興・創生期間後の各機関に対する期待も質問。復興庁は「被災自治体の伝承、防災施設の財政支援」、防災庁は「防災行動変容を促す施策、法制度整備」、県は「自治体の伝承・防災施策の連携支援」、市町は「多様な民間活動の自立性、持続性向上の環境整備」が最多となった。
結果を受け、武田代表理事は「来訪者の減少により不安が大きくなっている。活動資金、人材の確保が大きなテーマだ。公共の伝承施設ですら危機感を抱いている」と指摘。「行政などによる資金援助ももちろん望ましいが、存続していくためには伝承団体や施設の連携した取り組みが必要になる」と展望した。
発表会では、震災遺構門脇小学校や石巻南浜津波復興祈念公園で3・11メモリアルネットワークの中川政治専務理事らによる模擬現地学習体験も行った。中川専務理事は「災害への備えだけでなく震災の記憶を見て、聞いて命の大切さを知ることができるなど実際に伝承施設を訪れる価値を伝えていきたい」と活動の意義を強調した。










