建築設計3会/建築士・事務所の関連法制度改善策を国交省に提案/資格者確保など

2025年10月24日 行政・団体 [2面]

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 日本建築士会連合会(士会連合会、古谷誠章会長)と日本建築家協会(JIA、佐藤尚巳会長)、日本建築士事務所協会連合会(日事連、上野浩也会長)の建築設計3団体は、建築士と建築士事務所に関連する法制度の改善で提案をまとめた。人材確保、業務報酬の適正化、公共発注でのダンピング抑止などが柱。3会長が15日に国土交通省を訪れ、宿本尚吾住宅局長に提出した。
 提案書「建築士および建築士事務所に係る法制等の改善に関する提案」は▽技術者の確保と資質向上▽建築士・建築士事務所業務の適正化▽指定事務所登録機関の事務運営の是正▽報酬基準と公共発注での価格対策▽既存住宅状況調査の普及▽建築士および事務所の将来像-の6項目で構成している。
 担い手の安定確保に向け、2級建築士を実務要件なしで受験できるようにし、免許登録要件の実務経験期間を短縮(例えば現行7年を4年)するよう見直す。これに伴い、2級建築士から1級建築士になるための免許登録要件で実務経験期間の短縮を求めた。
 建築士試験は、ここ数年の法制度改正や教育界への影響などを検証し、DXで建築士に求められる資質の変化などを踏まえ、必要な見直しを提案した。優れた資質を持った建築士を確保するため、建築士事務所に所属する建築士は定期講習の受講が義務付けられている。受講を施工管理、行政、教育などに従事する建築士にも推奨するよう訴えた。
 小規模建築物で建築士の関与の義務付けも提案。延べ10平方メートル以上の建物を建築(新築、増築、改築、移転)する場合、建築士による建築設計・工事監理の関与義務付けを求めた。
 設計・監理業務契約での書面の相互交付の義務化や、複数の管理建築士の配置も提案。また賃貸ビルのテナント内装工事などを対象に、関連する不動産業、建設業も含め業界横断的な取り組みにより、諸契約での法不適合工事の排除、一定工事の建築士関与といった対策も検討を求めた。
 業務報酬基準の見直しも提案。設計内容ごとに標準的な設計期間を明示し、短期間での設計を求める場合は報酬を上乗せできるよう基準を設定。工事監理業務の報酬は工事期間が延びた場合、増額できるような基準を定めるべきだとした。改修工事を対象とした報酬基準の整備も求めた。
 建築設計・工事監理業務の契約では、発注者と受注者が相互に合意した見積書を作成するよう努めなければならないとの規定を新たに設ける案を示した。
 公共発注でのダンピング防止策は、低入札価格調査制度や最低制限価格制度があるものの、設計・監理業務で導入が広がっていないと指摘。適正な予定価格の設定とダンピング防止を両立する制度改革が必要と訴えた。最低制限価格制度を地方自治体が導入しやすくなるよう、全国統一の基準を作成するなど適切な運用の徹底を要望。契約価格が予定価格の80%を切らない運用で配慮も求めた。
 社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会等合同会議で議論する「今後の建築分野の中長期的なあり方」の中で、建築士や建築士事務所などの業の将来的な在り方を検討し、ビジョンとして示すよう提案。特に資格制度の在り方、人材確保策は別途ロードマップ提示を求めた。