日本国土開発の全額出資子会社であるANION(東京都港区、大野睦浩社長)が福島県南相馬市に建設していた「機能性吸着材製造工場」が完成し、23日に現地で開業披露式を行った。関係者約60人が出席し、代表によるテープカットで開業を祝った。投資額は約10億円。設計・施工は中里工務店(南相馬市)が担当した。
式典で、南相馬市の門馬和夫市長は「工場の立地は地域復興につながる。雇用創出などさまざまな効果が期待できる」と述べた。日本国土開発の林伊佐雄社長は「小高西部グラウンドや隣接する旧金房小学校の除染作業を行った縁から、南相馬市での工場建設を決めた。復興支援に貢献したい」と語った。大野社長も「機能性吸着材の製造を通じてインフラリニューアルに貢献していく」と話した。
建設地は小高区飯崎北原51の1。新工場はS造平屋で1141平方メートルの規模。日本国土開発は新領域事業の一環として、2015年から「機能性吸着材」の開発や実証に取り組んできた。完成した工場で製造を本格化する。11月に稼働を開始し、12月には建設会社や建設資材メーカーへの出荷を予定している。
従来5トン程度だった生産量を年間45トンまで拡大する。プラントや人材の増強により、昼夜で年間最大100トンの生産も視野に入れる。
新工場で生産される「ADOXパウダー」は、さびの原因となる塩化物イオンなどを吸着する。無機系陰イオン吸着材で、活性炭のような浄水用吸着剤に比べ陰イオン吸着性能が高く、吸着後も分解せず土壌に溶け出しにくい。エポキシ樹脂に混合して補修材として使用することで塩害劣化を防ぎ、インフラの長寿命化につながる。
日本国土開発は30年までの長期ビジョンで、インフラ老朽化対策を貢献すべき社会課題の一つに位置付けている。RC構造物の更新プロジェクトなどがターゲット。工場建設による機能性吸着材の生産体制強化は、素材面から社会資本のリニューアルにより貢献することを目指している。










