竹中工務店は10日、月面で長期滞在を可能にする宇宙建築技術構想を発表した。ドーム建築の技術を応用した直径30メートル、高さ15メートルの大空間施設「Lunar Dome(ルナドーム)」と、通信・移動などを支える高さ150メートルの多機能タワー「Lunar Tower(ルナタワー)」の2案だ。多業種との連携を進めながら、2050年代の実現を目指す。
構想は、東京都港区の建築会館で同日開幕した展示会「宇宙のくらしをつくる建築展 Lunar Architecture by TAKENAKA」で公開した。
ルナドームはクレーターや縦孔内に建設する計画で、研究拠点や長期滞在施設としての活用を想定する。二重殻構造のジオデシック・ドームに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製リングを組み合わせ、外側に膜材を張って加圧。高真空の月面環境との圧力差を段階的に調整することで、軽量材料でも広い内部空間を確保する。
一方のルナタワーは、円形フレームを組んだ鉛直構造物。極域や縦孔など有力な居住候補地は険しい地形が障壁となり、通信遮断やエネルギー供給の不安定さ、危険な移動が課題となる。同社はこうした課題を克服するインフラとしてタワーを位置付ける。CFRPのリングフレームを基本部材とし、正四面体の立体トラスを積み上げて最大150メートルまで展開可能。タワークレーン技術を応用した建設方式、無人ロボット施工で高さ変更や解体・再利用にも対応できる見通しだ。
展示会ではこのほか、30~40年代の実現を目指す少人数向け月面移動型シェルター「Lunar LOTUS(ルナロータス)」や、最大16人の宇宙飛行士が滞在可能なモジュール拡張型拠点「Lunar COSMOS(ルナコスモス)」も紹介。ルナコスモスは三角形のユニットを連結し、花弁のように段階的に拡張。一度に約40人が1カ月程度生活できるという。
同社は23年に設計者や研究者で構成する「宇宙建築タスクフォース(TF)」を設立し、月面建築の要素技術を研究してきた。リーダーの佐藤達保氏(大阪本店設計部)は「地上での実証を加速させたい」と語り、発足時メンバーの田中匠氏(竹中ヨーロッパ)は「多くの人に宇宙建築を知ってほしい」と連携拡大に意欲を見せる。両氏はいずれも宇宙飛行士選抜試験の受験経験があり、「宇宙への思いは誰にも負けない。必ず実現させる」と熱を込めた。
展示会は14日まで。予約制で入場無料。申し込みは特設サイト(https://tsx-lunar-arch.peatix.com/)へ。








