大林組/カフェのように快適な休憩所を河川工事現場に設置/担い手確保へ投資

2025年10月30日 企業・経営 [3面]

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 川辺のテラスでコーヒーを手に同僚たちと談笑する-。大林組が千葉県市川市と東京都江戸川区の境にある旧江戸川で施工中の現場に、作業員の快適さを追求した休憩所を整備した。木目調のテーブルにカラフルないす、窓辺のカウンター席には光が差し込み、一見するとおしゃれなカフェのようだ。旧来の「詰め所」のイメージを覆す休憩所の整備には将来の建設業を担う人材を確保したい狙いがある。
 施工現場は「江戸川水閘門改築(1期)工事」(国土交通省関東地方整備局発注)。共に1943年3月完成で旧江戸川の河口から9・3キロに位置する江戸川水門と江戸川閘門(こうもん)の下流側に、新しい水閘門や魚道などを設ける。工期は、河川の仮締め切りを行う1期工事が3月~29年2月。新しい水閘門の据え付けや、既設の水閘門の撤去など2期工事を含む全体では33年ごろの完了を見込む。
 休憩施設「おひのくち」は平屋約240平方メートルの規模で、10日に完成した。名称は大林組の「お」と閘の訓読み「ひのくち」を組み合わせた。室内はカフェミュージックが流れ、社食サービスが利用可能。日中は専任スタッフが常駐する。これまで各地の現場で好評だった工夫をできる限り詰め込み、仮眠スペースやシャワー室、女性専用ルームに加え、長靴洗浄機やヘルメット乾燥機も用意した。太陽光発電やリユース品を活用し環境面にも配慮する。利用する鈴木達也さん(佐藤重機建設)は「15年以上業界にいるが、これだけ快適な休憩所は初めて」と笑顔。作業員同士の会話も弾みやすいという。
 大林組の上野浩二理事東京本店土木事業部副事業部長は「新4K(給料、休暇、希望、かっこいい)の希望に該当すると考えており、若い人が建設業界を目指すきっかけになってほしい」と期待する。川上季伸土木本部本部長室部長は、整備や運用には従来型の数倍の費用がかかったと明かした上で「これは担い手確保に向けた先行投資だ」と力を込めた。江戸川水閘門工事事務所の米田慶太所長は「協力会社の要望で来春入社予定の人が見学に来るなど、効果を実感している。全ての人が実力を発揮できる職場とし、施工・安全の質を高めたい」と意気込む。