インフロニアHD、三井住友建設/「脱請負」で新たな価値創造

2025年10月30日 企業・経営 [1面]

文字サイズ

 ◇総合インフラサービス企業への転換加速
 インフロニア・ホールディングス(HD)と三井住友建設が経営統合し、「脱請負」を軸に新たな価値創造に踏み出す。両社のネットワークとエンジニアリング力を融合し、国内外のコンセッション(公共施設等運営権)を成長戦略の中核に据える。EPC(設計・調達・建設)に計画立案、維持管理・運営を含めた体制を整え、建設業の枠を超えた「総合インフラサービス企業」への転換を加速する。脱請負を通じて、事業ポートフォリオの再構築と収益基盤の多角化を狙う。=10面に関連記事
 インフロニアHDの岐部一誠社長と三井住友建設の柴田敏雄社長が日刊建設工業新聞の取材に応じ、統合によるシナジー(相乗効果)戦略を語った。岐部社長は「請負中心のままなら統合は考えなかった」とし、異業種との競争が激しいコンセッションでは「建設会社ならではのエンジニアリング力が鍵を握る」と分析する。三井住友建設のPC橋梁や超高層建築など業界屈指の技術を取り込み、グループ全体で技術基盤を強化する。
 一方、三井住友建設は新たな成長領域としてコンセッション事業に照準を合わせる。空港や道路、上下水道など多様な施設運営で培ったインフロニアHDの知見と異業種ネットワークを活用し、事業拡大を図る。柴田社長は「PFIなど官民連携事業の実績を生かし、特に上下水道分野で貢献できる」と述べた。
 両社が注力するのは海外コンセッションだ。アジアと中東、アフリカを主戦場に位置付け、特に案件の多いインドやフィリピンでの展開を見込む。三井住友建設が政府開発援助(ODA)や日系企業の工事で培った実績を生かし、シナジーを高める構えだ。柴田社長も「海外こそシナジーの最大領域」とみる。売上高の2割を占める海外事業を成長軌道に乗せる方針を示す。
 インフロニアHDは11月14日、シナジー施策を織り込んだ中期経営計画(2028年3月期)更新版を公表する予定。まず国内建設工事で資機材の共同調達や受注調整を進め、コスト削減とスケールメリットの最大化を図る。研究開発や業務DXでも連携を強化し、脱請負の取り組みを中長期的に深化させる。
 岐部社長は「前田建設と三井住友建設の合併は現時点で考えていない。統合の目的ではない」と明言。「売上高を追うより、オンリーワンを目指す」と語った。人口減少による公共投資の縮小や人手不足を背景に、建設業界ではM&A(企業合併・買収)が相次ぐ。岐部社長は「国も経営統合を後押しする施策を検討すべきだ」と提言。上場各社だけでなく、地方の中小建設会社も含めてHD戦略の拡大が企業経営の鍵になるとの見解を示した。
 経営統合の波が広がる中、両社は次世代インフラ企業の先駆けとして、新たな成長ステージを見据える。