東京ガス/デジタル技術で業務革新/AIで設備の異常検知

2025年12月5日 企業・経営 [4面]

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 東京ガスが業務にAIなど先端技術を積極導入している。液化天然ガス(LNG)ポンプの異常を高精度に検知したり、地域冷暖房などで使う熱源機器を最適制御したりなど、取り組みは多種多様。LNGの調達から顧客への販売まで全プロセスにAIを活用。次世代の価値を創造する「AIネーティブ企業」を実現する。2030年にはGXやDXの領域で500億円の利益確保を目指す。
 LNG基地のポンプが故障しているかどうかは、これまで監視員が振動データなどを基に判断していた。振動値は安定しているものの、重度の故障だったケースもあり、誤判定が課題だった。修理費の負担も重かった。ポンプの状態判定にAIを利用することで、約90%の精度で異常が正しく検知できるようになった。コスト削減だけでなく、経験の浅い作業員でも監視業務に就くことが可能になった。
 地域冷暖房で使う冷水ポンプや熱源機など熱源機器の操作も従来、熟練オペレーターの経験に頼るケースが多かった。ノウハウを取り込んだ独自のAIが機器を最適に制御。オペレーターの定年退職が増える状況にあって、同社はAIを武器に高度な運用を維持する。省エネルギーやエネルギーコストの削減にもつなげる。
 風力発電で使う風車の配置にもAIを使っている。風況シミュレーションの結果に地理情報や最適化AIを組み合わせる。複数の風車をどう並べれば効率的な発電ができるかが分かる。人による風車配置に比べ、年間発電量が約11%向上した。
 人材育成にも注力している。22年度にはDX人材の育成体制を構築した。デジタル技術の活用人材を育成する「DX基礎教育」や中核人材を育てる「DX発展教育」を実施中だ。
 同社は2日にグループのDXの取り組みを紹介する社内向けイベント「TGXフォーラム2025」を都内で開いた。先端AIソリューションやスタートアップとの連携、業務・教育DX支援サービスなどを紹介。会社や部署の垣根を越えた議論も展開した。
 東京ガスの清水精太常務執行役員最高デジタル責任者(CDO)は「業務の効率化や高度化に向け、前からデジタルを取り込んできた。国内で『大企業』と言われる会社中で、当社のDXの取り組みは先頭集団に入っていると考える」と話した。