国交省建設業政策勉強会/人材確保・育成へ、業界慣習見直し求める声/直用化促進など

2025年12月9日 行政・団体 [1面]

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 建設業で働く「人材」の確保や定着に向けた政策的対応を議論した国土交通省の有識者会議で、旧来からの業界の慣習・制度を見直す必要性を指摘する声が挙がった。技能者の月給制や退職金の定着、現場の朝礼の見直しなど提案は多岐にわたる。重層下請構造や零細企業の多さがネックとなっているならば、技能者の直接雇用の促進などに「ルール(規制)、インセンティブ(誘導)、働き方の多様化のそれぞれの観点からアプローチできるのでは」との意見があった。
 建設業の人的資源の在り方を議論した11月5日の第4回「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」での主要な発言内容を国交省が公表した。
 月給制は「(就職先を選ぶ)学生や親にとって重要」であり、働き方改革が進む局面で「日給で稼ぐことには限界がある」との声があった。他産業との比較で魅力の高いキャリアパスや退職金制度を提示できることが人材の定着に必要だとの指摘もあった。
 重層下請構造や、零細企業が乱立する産業構造が問題の根っこにあるとの主張は根強い。「数人の会社で人材育成やDX投資が十分にできるか」と疑問視する声があり、企業規模の構成の偏りを最適化できれば「生産効率は上がるはず」と話す委員もいた。
 限られた人材で現場を運営することも重要な論点だ。働き方の多様化を受け入れることが一つの道であり、育児などの事情から朝礼に間に合わない人材も許容する現場の体制づくりを求める委員がいた。「建設業の女性はサポート的な仕事に従事することが多く、男性は上に行けても女性は行けない」と言うように女性活躍のモデルが依然乏しい現状も指摘された。
 人材の柔軟な活用を可能にする企業形態としてホールディングス化を評価する声もあった。個社の技術や価値を生かせると同時に、他社と連携し相乗効果を発揮できるとする。ゼネコンとは異なる視点から「現場発の工法改良などでイノベーションを起こすには『強い下請』をつくることが重要」との意見もあった。
 1人当たりの生産性を高めるため、ある委員は「DXによって省力化して生まれた時間を何に使うのかが重要だ」と強調。エンジニア(技術者)やワーカー(技能者)の違いなどを考慮した検討が必要と訴えた。