アスファルト合材の需要低迷に伴い、合材工場が減っていることで、災害復旧に対する影響が懸念されている。搬送距離や製造能力の都合で緊急工事の現場に十分な合材を届けられなくなる事態になりかねない。日本アスファルト合材協会(日合協)は、安定操業に必要な工場の稼働率を確保するため、工事発注をはじめとする需要対策を求めるとともに、道路管理者に対する搬送距離を伸ばせる中温化合材や、保存が可能な高耐久常温合材の情報発信を強化する方針だ。
日合協によると、全国のアスファルト合材製造量は1992年度の約8000万トンをピークに減少が続き、22年度に4000万トンを割り、24年度は約3500万トンとなった。需要減から1992年に1740基あった工場は、現在ほぼ半分の987カ所となり、稼働率が30%に満たない工場もある。
能登半島地震の被災地では、半島北部の3工場が道路啓開や緊急工事のために加熱合材を出荷した。ただ一部の工場は、需要減から操業の在り方を検討していた。合材供給の課題は工場数にとどまらない。製造能力に幅があり、南海トラフ地震による津波被害などが懸念される高知県の場合、工場が13カ所にあるが、能力が毎時60~90トンの中規模が中心で、同30トンも複数ある。
同県内のある地域を対象に試算すると、1日に供給できる合材で可能な舗装が延長約1・4キロメートルにとどまる。主要道路の延長の大半が被災したり、孤立地域が発生してしまっていたりしても、復旧や啓開の期間が長くなってしまう。日合協の担当者は「何日で啓開するか、タイムリミットを決めて対策を講じる必要がある」と指摘する。
北海道は1990年代に300基近い工場があったものの、4月時点で96基となっている。道内を6圏域に分けると、札幌などの道央エリアに3分の1が集中、ほかのエリアは10基前後。各圏域が大きいだけに、「(合材供給の)空白地帯がある」と、災害発生を懸念する関係者が多い。
日合協は、安定操業に欠かせない工場の限界稼働率を意識した需要喚起も必要とみている。全国には老朽化した工場の更新に合わせてフォームドアスファルト装置を導入し、通常の合材より温度が下がっても施工できる中温化合材の供給に力を入れる舗装会社がある。工場からの搬送距離が増えるため、同合材の性能をアピールする。常温合材を巡っては、必要な強度が発現され、重交通箇所に対応できる全天候型の製品もあり、半島地域の災害備品としての採用を提案していく。








