インフラを守る-八潮市の道路陥没事故1年・2/提言受け法令・制度見直しへ

2026年1月29日 行政・団体 [2面]

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 ◇現場の担い手の処遇改善要請
 事故を受け国土交通省は対策検討委員会(委員長・家田仁政策研究大学院大学特別教授)の初会合を2025年2月21日に開いた。検討委は3次にわたる政策提言で全国の下水管路の点検強化などを求めるとともに、インフラ全般の維持管理・更新で抜本的な見直しを打ち出した。同12月1日、家田委員長から第3次提言を受け取った金子恭之国土交通相は「法令を含む制度の見直し検討を加速する」と表明した。
 第1次提言は同3月17日。老朽化が進む下水管路のうち、腐食などのリスクが高い区間を対象にした「全国特別重点調査」の実施を提案した。提言に呼応し、国交省は全国の自治体に対し点検・調査の実施を要請。同9月に公表された調査結果では、最も危険度の高い「緊急度I」と判定された下水管路は75キロに達し、老朽化の厳しい実態が浮き彫りになった。
 同5月28日の第2次提言は「管路の損傷しやすさ(ハザード)」と「事故発生時の社会的影響の大きさ」の二つの観点で、点検調査にめりはりを付ける必要性を指摘した。下水管路を戦略的に再構築していく方策として、メンテナビリティ(維持管理の容易性)やリダンダンシー(冗長性)の確保を提案した。
 下水管路を巡る問題はほかのインフラにも共通する。検討委は同7月24日の会合で、第3次提言に向けて下水管路にとどまらず、インフラ全般に講じる対策を検討する方針を確認した。
 第3次提言は管理者と建設会社などの担い手、市民それぞれにインフラの実態を見せる「二つの見える化」や、インフラの調査と集約再編で「二つのメリハリ」を意識した対策の実行を求めた。「現場に『もっと光を』」として、地域を支える建設会社をはじめとするインフラの担い手の処遇改善を進めることも要請。統合的マネジメントの構築、インフラマネジメントに市民も参加してもらうための社会的「モーメンタム」の醸成も必要だとした。
 検討委はインフラを守っていく方策に、地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の推進や、安定的な予算確保、重点的な財政支援、制度改正の検討などを挙げた。家田委員長は「あらゆるインフラに共通して大きな変革が必要だ」と指摘した。
 第2次提言を踏まえ、国交省が昨夏に立ち上げた技術基準等検討会は、下水管路を「重要管路」と「枝線」に区分しためりはりのある点検の考え方を既にまとめている。破損すると社会的影響が大きい下水管路のうちの「要注意箇所」は、点検頻度を従来の5年に1回以上から「3年に1回以上」に変える。
 国交省の石井宏幸上下水道審議官は「提言を具体の施策に落とし込んでいくのがこれからの仕事」と話す。転機を迎えた国や自治体などのインフラの維持管理・更新。技術者も財源も不足する中、持続可能なインフラをどう次世代へつなげていくのか--。これからが正念場になる。