国土交通省は2025年度から直轄工事で試行する労務費や技能者賃金の実態把握で、適正額の確保を促す観点から労務費・賃金の「目標金額」を設定する方針だ。発注者が労務費・賃金の支払い状況を確認する際、適正さを判断する目安としつつ、受注者側の元請や下請にダンピング抑制や生産性向上、技能者の処遇確保を促すための動機付けにしたい考えだ。まずは受注者に任意で協力してもらう形で試行を開始。目標達成状況に応じ将来は「基準金額」として受注者に順守を求める仕組みに発展させることも視野に入れる。=2面に関連記事
試行工事では受注者の元請と、技能者を雇用する下請に▽労務費▽賃金▽労働時間-の三つのデータを発注者に提出してもらい「見える化」する。
各工事で実態把握の対象工種を定めた上で、雇用主の下請は賃金台帳上の技能者の賃金総額と総労働時間を発注者に直接提出。元請は下請に支払った労務費と、試行工事で技能者が実際に働いた作業時間を把握し提出する。これで工事単位の契約関係の中で作業時間に対し労務費が、企業単位の雇用関係の中で労働時間に対し賃金が適切に支払われているかどうか判断可能となる。
目標金額は労務費の場合、公共工事設計労務単価から算出した1時間当たり単価に現場での作業時間を乗じた金額以上とする。設計労務単価をベースとした時間給を支払えるだけの労務費の確保を前提に、元請などが施工の工夫で生産性を向上させ作業時間を縮減することにインセンティブを持たせる。賃金は、雇用主の下請が技能者に支払う賃金総額の平均値が設計労務単価相当であることを目標に据える。
国交省はまず受注者希望型で試行工事に着手。元下双方の手間にならない効率的な実施方法に随時改善しながら協力を働き掛ける。適正な労務費・賃金を確保した見積もり・契約が定着し、目標金額がほぼ達成できる状況になった段階で基準金額に切り替える。発注者指定型で強制力を持たせた運用に発展させる。
基準金額を打ち出す前の段階で、積算上の歩掛かり・経費が現場実態と合わないことがある現状の課題に対応する必要性も指摘。見える化したデータに基づく歩掛かり・経費の設定や見積もりの活用で現場条件に即した多様性・汎用性ある積算方法の確立を目指す。