国交省/建築分野中長期ビジョンの方向性固まる/ストック活用に軸足移す

2025年10月17日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省が今春から検討している建築分野の中長期ビジョンの方向が固まってきた。新築を前提とした従来の法制度などを、ストック活用に軸足を移して見直すことが大きな柱になる。建築基準法で定める用途規制などの「集団規定」や、建築士法に基づく建築士試験制度の見直しとも連動する予定。社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会で2026年1月にまとめる中間的な検討成果を踏まえ、「(政策具体化への)ロードマップを描く」(宿本尚吾住宅局長)考えだ。
 ビジョン策定は将来の社会像を踏まえ建築政策の方向性を示し、民間側の投資予見性の確保や、計画的な人材確保・育成と技術開発に必要な道筋を与えるのが狙いだ。策定方針を打ち出した4月以降、「建築分野の中長期的なあり方に関する懇談会」と「集団規定に係る基準検討委員会」を設置。ベースとなる論点をまとめ、16日の社整審建築分科会で報告した。
 懇談会ではビジョンの枠組みを▽建築物・市街地(モノ)▽担い手(ヒト)▽環境・仕組み(社会)-の三つの視点で提示。座長を務めた松村秀一神戸芸術工科大学学長は、ストック活用に軸足を置いた法規範や産業編成、人材育成、技術体系、金融システムへの見直しを訴えた。建築物の利活用段階を含む担い手の確保、脱炭素化技術やAI・ロボット技術の有効な社会実装の必要性を指摘した。
 集団規定の検討委でも既成市街地を前提とした規制や誘導、運用の在り方を検討する方向性を示す。委員長を務めた有田智一筑波大学システム情報系社会工学域教授は、既存建築物の活用・更新への投資を促進する観点で、現行規制は「硬直的」との見解を表明。容積率規制の緩和条件として多様な公共貢献を評価したり、用途混在を許容する形で規制を柔軟化したりする方策の検討を提案した。
 国交省は中央建築士審査会で建築士試験制度の今後の在り方の議論を始めたことも明かした。構造計算書偽装問題を契機に見直された現行制度を、人材確保・育成やストック社会、デジタル化といった視点で検討する。