近畿地方整備局は発電施設の開発・建設・運用を行う電源開発と連携し、新宮川水系の濁水対策と治水機能の強化に取り組む。2024年度に共同検討の協定を締結しており、まずは十津川流域にある風屋ダムと二津野ダムの有効活用に向けた検討を始める。両ダムを管理する電源開発は風屋ダムで土砂排出用バイパス(BP)トンネルの整備を構想。今後、河川整備計画に位置付けるための調査検討を進める。
両ダムはいずれも奈良県十津川村に位置する水力発電用ダム。風屋ダムは1960年に完成した重力式コンクリートダムで堤高101メートル、堤頂長329・5メートル、総貯水容量は1億3000万立方メートル。二津野ダムはアーチ式コンクリートダムで62年に完成。堤高76メートル、堤頂長210・6メートル、総貯水容量は4300万立方メートル。
十津川では11年の紀伊半島大水害に伴う山体崩壊などの影響で、以降も濁水が長期にわたって発生している。こうした状況を踏まえ、電源開発は風屋ダムでBPトンネル整備を構想し、24年9月に開いた熊野川流域懇談会に諮った。有識者からは「水質改善に加え、治水にも効果があるのではないか」との意見が寄せられたことから、近畿整備局も治水上の意義があると判断し、電源開発との共同検討に乗り出した。
共同検討に先立ち、12日には近畿整備局の常山修治河川部長と電源開発の奥村裕史西日本支店長代理らが、北海道開発局と電源開発の共同事業が進む北海道・十勝川水系の糠平ダムと幌加ダムを視察。融雪出水や冬季の電力需要に対応したダム操作、治水機能向上への取り組みなどについて現地で説明を受けた。
幌加ダムでは既に土砂BPの整備が進められており、十津川での構想と共通点も多い。視察では運用上の工夫や技術的課題を共有し、今後の検討に活用する。近畿整備局は発電と治水の両立、濁水の低減や環境改善など、流域全体の水管理を見据えたダムの有効活用を目指す。