堺市/堺ミュージアム整備へ議論始動、市が基本理念提示

2025年8月6日 行政・団体 [14面]

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 堺市は博物館と美術館の機能を併せ持つ複合文化施設「(仮称)堺ミュージアム」の整備に向けた基本構想の検討を本格的に始めた。市の歴史文化資源や芸術作品の発信力を強化し、観光やまちづくりにもつながる拠点を目指す。7月31日に有識者による懇話会の初会合を開き、市が提示した基本理念案を基に意見交換を行った=写真。
 懇話会では座長に藪田貫関西大学名誉教授を選出。初会合では「ここに来れば堺がわかる知の集積の場」「文化財レスキュー機能の整備」「社会・学校教育への貢献」「SDGs(持続可能な開発目標)への配慮」など六つの基本理念案が示され、「従来型博物館の延長ではなく、グローバル課題への対応や感情に訴える発信力が求められる」「市民にとっての居場所となる施設像も必要」といった意見が出た。
 ミュージアム構想では堺市博物館や堺アルフォンス・ミュシャ館など既存施設との連携・再編や、所蔵するヒストリックカーの活用方針も課題となっている。観光振興や都市ブランディングとの関係も論点に挙がり、「他都市の事例も参考に、堺ならではの特色ある施設にすべき」との声もあった。
 施設は登録博物館や公開承認施設制度の取得も視野に整備方針を検討する。
 委員からは「ヒストリックカーの展示には車両の搬出入や保管を見据えた大開口部など、それなりの空間計画が必要」との指摘のほか、「展示物の特殊性が登録博物館や公開承認施設としての基準と整合するか不安がある。施設設計の初期段階から慎重な検討が必要」といった意見が出た。
 建設予定地は大仙公園に隣接する旧大阪女子大学大仙キャンパス跡地(堺区大仙町、約4・6ヘクタール)。懇話会では今後、施設の役割や機能、空間構成、運営体制の在り方について意見を深めていく。次回会合は9月11日に開催し、施設に求められる役割と機能を議論する。2026年度に基本構想を策定し、基本計画の検討に移行する。
 現堺市博物館は堺区百舌鳥夕雲町に所在し、1980年開館。SRC造地下1階地上3階建て延べ6371平方メートルの規模で、百舌鳥古墳群を中心に堺の歴史文化を紹介してきたが、老朽化や展示手法の見直しが課題となっている。堺アルフォンス・ミュシャ館は堺区田出井町の商業ビル「ベルマージュ堺弍番館」の2~4階部分に設けられ、延べ約2460平方メートル。美術館専用の建物ではなく、展示室の分断や天井高の制約、収蔵スペースの不足といった構造的課題を抱えている。