国土交通省の水嶋智事務次官が日刊建設工業新聞など専門紙の取材に応じ、今後の方針などを語った=写真。インフラ整備や国土強靱化は「中長期的な視点がより重要になる」と強調。経済成長に寄与するインフラのストック効果を発揮し、担い手となる建設業者の安心した設備投資や人材育成を可能にするためにも、安定的で持続的な投資規模の確保を目指す。担い手不足に直面する建設業界の課題解決には、物流業界など幅広い産業を所管する国交省の強みを生かし「ベストプラクティスを水平展開する」考えを示した。
7月に就任し、国交行政全体を統括する役割に「重みや責任を感じる」と気を引き締める。旧運輸省出身で、空港や新幹線の整備事業に携わるなど経験も豊富。「発注者としての経験も礎に務めを果たしていきたい」と意気込む。
自然災害のリスクが高まり、人口減少による地域構造の変化も進行する。インフラの老朽化など将来の不確実性も踏まえ、水嶋氏は「計画的、戦略的に社会資本整備と国土強靱化を推進する」と表明。策定中の次期社会資本整備重点計画や、6月決定の第1次国土強靱化実施中期計画を踏まえた事業執行に注力する。
政府の重要政策の一つとなる「地方創生2・0」で中心的な役割を担うことに意欲を見せる。基本構想で掲げた「地方分散」や「広域リージョン連携」など5本柱の政策を列挙し、「広域の経済圏を結ぶ。地方レベルの経済・生活圏を充実させる。その両方で国交省は密接に関係する」と指摘。道路や鉄道、港湾、空港などの交通モードが連携した「陸海空の有機的な総合交通体系を整備していく必要がある」と語った。
建設業の担い手確保では「新4K(給与、休暇、希望、かっこいい)を実現し、国民生活を支える重要な役割を担っていけるよう業界と一体で取り組む」とした。物流業界とは多重下請などの業界構造で似ている部分が多く、「どう産業の生産性を高め、どう働く方の待遇を改善していくか」が共通の課題と見る。産業を俯瞰(ふかん)で捉え、処遇改善や働き方改革を推進するルール設定や実効性確保に対応する。