得意とする海上・陸上土木を軸に安定した収益を確保しながら、今後拡大が期待できる洋上風力発電関連で受注確保を狙うなど、次代に向けた成長の道筋を描く。「ボトムアップ経営」と「社員とのコミュニケーション」を重視し、社員にやりがいや誇りを感じてもらえる職場環境づくりに力を注ぐ。
--就任の抱負を。
「基本的なスタンスは変えないが、より無駄を省き、筋肉質な組織体制を維持しながら、海上・陸上土木で積み重ねてきた経験を生かす。冷静な判断で収益力を高め、持続可能な経営基盤を築く。会社は皆の力があってこそ成り立つ。現場の声を遠慮なく伝えてほしい」
--経営方針は。
「ボトムアップを基本とする。目まぐるしく変わる社会・経済環境に対応できるよう、現場の意見や社員の声に耳を傾け、柔軟な思考で経営判断を下していく。そのためにも日頃からのコミュニケーションが大切だ。世代や立場を超えて交流を深め、信頼関係をさらに強めたい。DXなどで生産性を高めることは必要だが、根本は人と人とのつながりが組織の力になる」
--受注戦略を。
「海上・陸上土木を軸にしつつ、建築や環境事業もバランス良く受注する。作業船の保有は当社の強みだが、主要船をクレーン船3隻とミキサー船1隻、大型輸送船1隻の計5隻に絞った。保有そのものを目的とせず、状況に応じて柔軟に整理する」
「成長分野の一つが洋上風力だ。施工に必要なSEP(自己昇降式作業台)船は当社と五洋建設、鹿島が共同保有している。北九州響灘洋上風力発電事業の実績なども生かし、需要拡大が見込める洋上風力事業に取り組む。阪神高速道路会社の大阪湾岸道路西伸部、沖縄県キャンプ・シュワブや鹿児島県馬毛島の防衛関連工事といった大型案件も積極的に対応していく。売り上げも重要だが利益の確保と人員の適正配置を重視する」
--担い手の確保が課題になっている。
「工業高校での出前講座などを通じ建設業の魅力を伝えていく。神戸駅への広告掲出や神戸アリーナの年間シートの活用など、広報活動や福利厚生の充実にも力を入れる。理系・文系、男女を問わず採用を広げながら、働きやすさとやりがいを感じられる環境づくりに努める」
--働き方改革は。
「DXの取り組みでは勤怠や工数を見える化し、過重労働を未然に防ぐ。現場ごとにアラートを出して時間外労働を抑え、休暇が確実に取得できる体制を整えるなど、管理精度を高めていく。柔軟な思考で共に挑み、成果を分かち合える組織を築きたい」。
(10月1日就任)
(よりがみ・ゆうすけ)2001年大阪学院大学経済学部卒、寄神建設入社。15年常務、17年代表取締役常務、19年同専務、23年同副社長。堅実で柔軟な経営姿勢を信条とし、社員との距離が近いフランクな人柄で人心掌握にたける。趣味はゴルフや家族とのキャンプ。仕事も私生活も人と共に歩む。兵庫県出身。48歳。