国交省/ウクライナ復興支援で遠隔施工デモ実施/キーウ~神戸間8千キロ

2025年10月10日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省とウクライナ政府は9日、重機を使った遠隔施工のデモンストレーションを同国の首都キーウ市で行った。同市のコントロールセンターから神戸市にあるコベルコ建機施設内の重機を動かし、遠隔操作が可能かどうかなどを確認した。日本の技術を戦災復興に生かすのが狙い。がれき処理への導入を目指し、国交省は復旧・復興工事の要件化などをウクライナ政府に働き掛ける。
 日本の遠隔施工技術は、1990年代に雲仙普賢岳噴火災害復旧工事で活用した皮切りに30年以上、現場で実績を重ねてきた。危険な環境でも人命を守りながら作業ができる技術として確立。地震や噴火、台風など自然災害が続き、関連技術の開発が活発になっている。
 ウクライナは国外に避難したり、戦地に赴いていたりしている国民が多く、人手不足が深刻な状況にある。破壊された建物は石綿(アスベスト)が含まれている可能性があり、地上には不発弾や地雷などの危険もある。厳しい環境を克服して復興を安全で迅速に進める場合、従来の施工方法だけでは対応に限界がある。
 労働力不足を補うために、育児中の女性や戦傷者など現場に出られない人も、建設作業に参画できるようにすることが求められている。国交省は遠隔施工の導入による「人的資源活用ビジネスモデル」を構築し、復興に貢献する。
 デモンストレーションには国交省以外に八千代エンジニヤリング、ソリトンシステムズ、コーワテック、コベルコ建機の職員、ウクライナ政府関係者、現地協力企業、国際機関などが参加した。
 コベルコ建機が開発した重機の遠隔操作ソリューション「K-DIVE(ケーダイブ)」を使用。ICTを駆使し、オペレーターが危険な現場に赴かず、安全な場所から操作できる。
 約8000キロ離れたコベルコ建機神戸テクニカルトレーニングセンター(神戸市中央区)と、約20キロ離れたキーウ市内の施工現場、2カ所にある重機をそれぞれ遠隔操作した。
 ウクライナは、長引く戦争で道路や橋梁、上下水道などのインフラに甚大な被害が出ている。爆撃によるがれき処理などもあり、今後10年間で約5240億ドル(約79兆円)の復興費用が必要と試算されている。
 開会に先立ち国土交通省の小島優官房審議官(技術、水管理・国土保全)は「官民連携で多くの企業が参加し、インフラ復興により貢献できるようしっかり支援したい。日本の技術がウクライナの復興に貢献することを期待している」とキーウの現地であいさつした。
 神戸市のトレーニングセンターでデモを見守ったコベルコ建機の山本明社長は「K-DIVEがウクライナの復興で役立つと信じている。デモンストレーションを通じて可能性を見てほしい」と話した。