国交省/技能者通報システム構築へ/25年度補正で調査検討、賃金不満など直接把握

2025年12月1日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は、建設業で働く技能者が自らの賃金情報を入力し処遇への不満などを直接通報できるシステムの構築と運用体制の検討に取り掛かる。政府の総合経済対策で中小企業などの賃上げ環境の整備に重点を置く中、2025年度補正予算案に調査費用を計上した。「労務費に関する基準(標準労務費)」に基づき請負契約で確保された労務費が、適正な額の賃金として技能者に行き渡っているかどうか確認する仕組みの一つとして27年度にも試行運用を目指す。
 標準労務費の実効性確保策のうち、労務費・賃金の実際の支払いを担保する「出口」の対策の一つと位置付ける。各地方整備局の「駆け込みホットライン」など法令違反の疑義情報を受け付ける既存の窓口と異なり、法令違反に該当するかどうかにかかわらず、実際に賃金を受け取る技能者本人から直接情報を寄せてもらうことに主眼を置く。「自分の能力に見合った賃金の水準ではないのではないか」といった相談や情報提供を受け付け、現場の実態をより直接的に把握する。
 現時点のイメージでは、デジタル技術を活用した通報受け付けシステムを国交省が主体となって整備する。技能者は給与明細や労働実態などの情報を入力し、各整備局や都道府県の許可行政庁に相談する流れとなる。これを端緒情報に、必要であれば建設Gメンが雇用主を調査し、取引適正化の是正指導に当たる体制を構築する。労働基準監督署など関係省庁との連携も視野に入れる。
 持続可能なシステム管理・運用につなげるため、官民の役割分担も検討し27年度中に結論を出す。標準労務費に関する中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)では、別途設置する第三者機関が管理主体となる選択肢も挙げている。
 WGでは賃金支払いの実効性確保策として悪質な事業者を国交省が公表する制度をつくり、優良な事業者が市場で選択される環境を整備する方針なども示されている。